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PSO2小話 ~流星のように~

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ダーカー。
オラクル太陽系のあらゆる惑星で存在が確認されており、虚空から現れ虚空へと消える未知の存在。
他の原生種を侵食・凶暴化させる他、フォトンの力を駆使しなければ完全に駆逐することはできない特性を持つ。
ダーカーの侵食を受けたものは、浄化を行わない限り、最終的にダーカーと化す。


-惑星ナベリウス-


のろのろと重い足取りで緑の大地を踏みしめる。

風に揺れる青い短髪をガシガシと乱暴にかきながら、大きなあくびをひとつ。
サングラスに阻まれて目の様子はわからないが、眠そうな、気だるげな雰囲気を全身から醸し出す。
であれば目もおそらくはそうなのだろう。
無理もない。
生い茂る草木や静かに流れる小川、自然豊かなこの風景も、この男、クロス・ソロにとっては見慣れたものだった。
自宅のリビングと同じ、毎日目にするのが当然の風景。



              たとえ凶暴化した原生生物が目の前にいたとしても、それに変わりはなく。



視線の先には猿のような原生生物、ウーダンとザウーダンが群れを成して今にも襲い掛からんとしている。
おもむろにサングラスを外し、背負っている巨大な黒い槍に手をかける。
案の定、眠気を湛えたその眼で目標をとらえ、もたもたゆっくりと近づいていく。

群れの中の一匹が彼のその行動にいち早く反応し、勢いよく飛び蹴りを放った。
クロスは特に表情を変えるでもなく、軽く身をひねり、石突きでウーダンの腹部を鋭く打ち抜く。
勢いをなくし、その場で落下するウーダンを掬いあげるように、刃で下から斬りあげる見事なコンビネーションでそのまま一匹を沈黙させた。

理性ある人間ならば、この一連の流れで実力差は一目瞭然、撤退という行動も取れたであろうが、凶暴化した原生生物にそのような判断が取れるはずもない。
クロスもそういった敵をさんざ相手取ってきただけに、行動に淀みはない。
ゆっくりと、しかし力強く槍を振りかぶった。
クロスがそのまま群れを横なぎにしようとしたまさにその時、上空からフォトンの塊が勢いよく衝突してきた。
すさまじい衝撃とともに砂煙が巻き起こり、クロスの口にも砂が入りこみ、思い切りせき込んだ。

砂煙が晴れる頃には、群れは一網打尽にされており、その骸の中心に青髪の、小柄な少女が立っていた。

「あんまりモタモタやってんじゃねーよ、こんなの相手にさあ」
「げほっ……これから片付けるところだったんだ。見ればわかるだろ」

砂煙を払うように手を左右させながら、せき込むクロス。
レイは悪びれる素振りも見せず、吐き捨てるように文句を言う。

「すっとろいってんだよ!一個でも多く任務こなせば、それだけメセタも入るんだ。時は金なり、ってな!」
「レイ、お前別に金に困ってないだろ」
「あるに越したこたーねーだろ!」
「……まあそりゃそうだが」

レイと呼ばれた少女は、本名をレイ・セイリオスといった。
女性デューマン特有の頭部の2本の角、男勝りで活発な性格、それでいて子供のようにワガママな一面もあることから、クロスも日ごろから手を焼いている。
ブレイバークラスでカタナの使い手として活動するアークスであるが、アークスとしての力はクロスには遠く及ばず、研修任務修了時の成績は、実技は可もなく不可もないといったところ。

アークスとして活動を始めたのはクロスよりも後であり、クロスを師として教えを受けている歴1年目の新人である。
師とはいうものの、クロスとはレイの初任務時にたまたま居合わせただけであり、その強さに惚れこんだレイが押しかけて弟子入りになっただけなので、クロス自身は師としての自覚はまるでないのだが。
最近はレイもそういったクロスの態度を受けて、友人として接しあっている様子である。

「それに、忘れてねえだろ?アタシらの取り決め。掃討作戦防衛任務敵討伐作戦の場合、敵討伐数多い方が取り分6:4の6だってこと」
「それはお前が勝手に言い出したんだろ……第一、この程度の任務ならもうお前一人でも十分なはずだ。どうして俺を連れてくるんだよ」

外したサングラスをかけながら、呆れた口調で反論するクロス。
レイが少し飛び上がって、クロスの頭を軽くひっぱたいた。

「バカヤロ。本当な訓練も兼ねてんだからなこれ。アタシの成長具合をお前がチェックするんだよ。仕事さぼんなバカ」
「お前、今二回もバカって言ったな。大体仕事じゃない」
「うだうだいうな!金もらえるんだからいいだろ!ハイ先行く!もたもたしてっと置いてくぜ!」

より一層やる気をなくしたクロスに対し、レイは嬉々とした表情で飛ぶように先へ走っていった。

クロス・ソロは、アークスとしては上々の実力を誇る。
ダーカーの支配層であるダークファルスの撃退作戦にも幾度となく参加し、功績を残している。
そのクロスに、曲がりなりにも教えを受けたことで、
彼女も1年という月日では考えられないほどの成長を遂げていた。
クロスの目から見て、それでもう十分なのではないかと感じられるほどに。

(あれでもまだ不満か……意識が高くて結構)

ため息をもらし、レイの後を相変わらずの足取りで追おうとしたところ、すぐ先でレイが騒ぐ声が聞こえた。

(今度はなんだ)

眉間にしわを寄せ、背の高さほどもある草をかき分けながら進んでいく。
開けた水場に出ると、そこには空をぼうっと眺めているレイがいた。
しかし、クロスが来たことに気が付くと、すぐにそちらに目をやって声を張り上げる。

「あー!遅いってのもう!」
「なんだ、アギニスの群れでも飛んでたのか」
「バカ!流れ星だよ!流れ星!昼の流れ星!デイライトシャワー!」

は、と疑問形の声が思わず口から漏れるクロス。
昼間の流れ星は、基本的に肉眼ではとらえられない。
視力どうこうの問題ではなく、単純に光の強弱の問題である。
同じ夜でも、光あふれるネオン街では星が少なく見えるように、闇に満ちる山奥では星が多く見えるように。
基本的に光の弱い星は、強い光に負けて見えなくなってしまう。
昼とは太陽が出ている時間帯なのだから、極端に言ってしまえば太陽に負けない光が必要になってくる。
理論的に知らずとも、直感的にわかるであろうこのことを超越した出来事が今起きたと、声高に叫ぶ少女。
誰もが発するであろう言葉を、もちろんクロスも紡ぎ出した。

「見間違いだろ?」

次の瞬間、クロスの頭にレイのげんこつが降り注いだ。

「殴るこたァないだろ!」
「うるせーバカ!本当に見たんだよ!」

胸倉をつかんでけんか腰に迫るレイ。
彼女もただごとでないことが起きたと思って必死なのかもしれない。
そう考えたクロスは、げんこつをくらった頭頂部をさすりながら、彼女を落ち着かせるように話しかける。

「まあ落ち着け落ち着けって。いつものアレかもしれないだろ」
「アレ?」
「戦闘機の救援。いつもより高いところ飛んでたってだけかも」
「……」

アークスの支援兵器として、定期的に活動地区内を飛行していえる戦闘機がある。
この戦闘機は、フォトンの力を使用した兵器、装甲を使用していないため、原生生物に撃墜される、ダーカー侵食子の影響で、エンジントラブルによる不時着、果てはダーカーに完全に侵食されて停止命令が出るなど、救援要請に事欠かない。
アークス達の間ではこれの緊急救援要請は日常茶飯事となっており、無論それはレイとクロスとて例外ではない。

「……それかな」
「知らないが」
「でもあんな高いところ飛ぶかな」
「どのくらいの高さだ」
「点に見えるくらい」
「うーん……」

二人はしばし悩んで沈黙したが、レイがふとあることに気づき、顔を青ざめさせた。

「……ていうかさ、流れ星と間違えるってそれ、燃えてるってことか」
「……!」
「墜落してる途中ってことじゃねえの……」

クロスもレイ同様に顔を青ざめさせる。
不時着程度ならば日常茶飯事だが、完全な墜落はさすがに茶飯事とは言い難かった。
思わず少し焦りを含んだ口調になるクロス。

「どっちの方角だ」
「わ、わかるかそんなもん!」
「大体でいい!」
「……あっちかな」
「大体すぎるな……!」
「んなこと言ったって、具体的な方向なんざわかるかよ!」

焦りのあまり言い争いに発展したその刹那、爆発音のようなものが小さく響いた。
距離としてはかなり遠いようだった。

「……今の音、クロス!」
「急いだ方がよさそうだ。無事であればいいが……」

二人は爆発音の方向へと一目散に向かっていった。
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