月刺虐者 vs ミラ・アルタイル

>>次
ミラ(アークスになってからまだ1カ月)
ミラ(だが、仕事には慣れてきた……そろそろ、誰かと組んで仕事をしてもいい頃合いなはずだ……)
ミラ(……)
ミラ(……ルーノ)
ミラ「じゃない!!ルーノはダメだと言ってるだろうが!このバカが!!うがああああああああああ!!!」

虐者(変人がいる)

ミラ「……そういえば」
ミラ「そうだ、ブラッドと組んでみよう」
ミラ「アイツならきっと、断りはしないはずだ」
虐者「おい」
ミラ「……ん?」
虐者「お前さん、暇そうだな?」
ミラ「るっ、ルーノ!??!?」
ミラ「どっどど、どうしてここに……?」
虐者「ルーノ? なんだそりゃ」
ミラ「……え?」
虐者「誰かと間違えてんだか知らんが、この俺のそっくりさんがまさかこの世にいるとはな……宇宙は広いもんだ」
虐者「ま、意図的にまねしただけかもしれんがな」
虐者「無理もない、俺はそれほどまでに完璧で強くなりすぎた」
ミラ(コイツ……)
ミラ(ルーノにここまで似ているなんて……まさか)
ミラ「……失礼、人違いだった」
ミラ「お前の言う通り、私の仲間にお前と似たような容姿の奴がいて……」
ミラ「一瞬ソイツだと思ってしまったわけだ」
ミラ「で、私に何か用か」
虐者「いやなに、俺の同僚の名前を言っていたもんでな」
虐者「知り合いなのかと思っただけさ」
ミラ「ブラッドのことか?」
虐者「そうそう」
ミラ(……やはり、間違いない)



ブラッド「それにしても似てるなあ、ルーノ君は」
ルーノ「?」
ブラッド「見れば見るほど、家のチームリーダーに似てるぜ。本当に双子かと思うくらいだ」
クロス「確かお前、Talksとかいうチームに所属しているんだったな」
ブラッド「おう、そこのリーダーやってるやつとルーノ君ってすんげーそっくりだなーって思って」
レイ「そんなにー?こんな見た目のやつそうそういねーだろ」
ブラッド「俺も向こうで虐者を見ていたときはそう思ってたぜ正直」
ルーノ「ギャシャ?」
ブラッド「月刺虐者、それがリーダーの名前だ」
ブラッド「これがまたとんでもねー戦闘狂でよ、平和主義のルーノ君とは正反対だぜ」
レイ「へー、似てるのは見た目だけってことかあ」
ブラッド「ま、そんな感じよ」
ミラ「……」



ミラ(この男が月刺虐者か……確かにルーノと似ているが)
ミラ(ブラッドの言う通りだ、雰囲気がまるで違う。ルーノのものとは正反対の気を感じる)
虐者「ブラッドはお前が所属しているところで油を売っているというわけか……クク、アイツらしい」
虐者「確かに、お前のような女がいたんじゃあ、やつがそのチームに居座るようになるのも無理はないな」
ミラ「何が言いたい」
虐者「あいつはかわいい女に弱いからな」
ミラ「……」
虐者「おい、冗談で言ってるわけじゃないぞ。生粋の女好きだからな、アイツは」
ミラ「別に……そんなやつの判断基準にされたと思うとむしろ残念でならないだけだ」
虐者「なるほどな」

ミラ「それじゃあ、すまないが私は用があるのでこれで」
虐者「おい、ちょっと待て」
ミラ「……まだ何か用でも」
虐者「あるさ」
虐者「というより、新しく気になることができた」
虐者「そのルーノという男についてだ」
ミラ「……?」
虐者「仲間のお前が見間違えるんだ、さぞかしこの俺に似てるんだろうが」
虐者「それはそれで迷惑な話だと思わんか」
ミラ「……何が言いたい?」
虐者「俺もこう見えて有名人でな」
虐者「このオラクル船団とやらは、聞く話によれば地球にまで調査隊を派遣しているらしいじゃないか」
虐者「俺の姿形をしたやつに好き勝手されては困るんだよ」
虐者「以前にもそういう事件で困った目にあったこともあるわけだしな、勝手なことはするなと……」
虐者「地球人代表として忠告しておいてやろうと思ってな」
ミラ「随分と自分勝手な物言いだな」
虐者「考えても見ろ。 問題じゃないか、そのルーノというやつが」
虐者「仮に地球のあちらこちらを破壊するような野蛮なヤツだったら……俺は地球じゃ白い目で見られかねない」
虐者「特にそんな心当たりもないのに、だ」
虐者「あんまりといえばあんまりな話じゃないか」
ミラ「心配はない」
ミラ「ルーノはそんなヤツじゃないからな」
虐者「お前のその見方は、仲間だからという色眼鏡があるからこそできるものじゃあないか?」
虐者「絶対という保証はあるのか?」
ミラ「…………」
ミラ「……」
虐者「クックッ……そう怒るな」
虐者「これは俺からしてみれば当然の考慮……」
虐者「お前からすれば、仲間を侮辱しているようにしか聞こえないだろうが」
ミラ「わかっているなら、今すぐやめた方がいい」
ミラ「戦闘狂のお前でも、少し後悔するほどの戦いを」
ミラ「始めなければいけなくなるぞ……」
虐者「ほお……」
虐者「楽しいことを言ってくれるな……」
虐者「じゃあ少し遊ぼうか、お前のようにイキのいいのはもう地球にはいなかったからな!」
虐者「もしもお前が俺を楽しませることができれば……その」
ミラ「……貴様ッ」





(ルーノを……!)
「ルーノをッ……!!」

怒りに震え、歯ぎしりをしながら拳を握りしめる。
次の瞬間、彼女のそれは憤怒の咆哮となって虐者に叩きつけられる。

「ルーノを侮辱したなァッ!!!」

怒号が虐者に届くのとほぼ同時に、ミラは既にその懐に飛び込んでいた。

(速い!)
弾丸と見紛うようなミラの動きに、虐者は一瞬反応が遅れる。
直後、懐に打ち込まれる掌底が虐者の腹部を歪めた。

「ぐおおおっ……!?」

そして直後、その打撃とは別の爆発のような衝撃が再び同じところを襲う。
思わぬ衝撃に虐者は踏みとどまることができず、5mほど後ろに吹き飛ぶ。
が、持ち前の身体能力ですぐさま体勢を立て直すと、両足と片手を地につき、どうにか勢いを押し殺した。

「くっ……はは」
「この世界に住むからにはフォトンは使うんだろうとは思っていたが、お前は少し変わった使い方をするな……」

虐者は埃を払うように、ミラに殴られた腹部を軽くはたく。
表情には怪しい笑みを浮かべ、余裕があるように見えるが、その頬には一筋の汗が流れていた。

「拳にフォトンを込めて、打撃とフォトンの両方の攻撃を同時に行うのか」
「フォトンに頼りきりというわけでもなく、かといってフォトンが使えないから体術に逃げたようなものでもない」
「まさに両立している……」
「しかし、どちらかといえばフォトンの扱いよりも身体能力の方に自信がありそうだな。 今の一撃からすると」

ミラは特に表情の変化を見せない。
しかし、内心では多少驚きを隠せない様子でいた。

(今の一撃だけでそこまで見抜かれるとは……)
(あのブラッドが手放しに褒めるだけあって、この男……やはり恐ろしく手強いようだ)
(……だがそんなことで、さっきの侮辱を許すようなことはない)

ミラは腰を深く落とした体勢から一転、両手を十字に交差した小さな構えを取る。

(ほお、完全防御)
(俺を相手にそんなことをするのか)

「地獄を見るよりひどい目にあうぞ、お前」
「……」

虐者はゆらりとミラに近づき、射程圏内に入る。
その瞬間、四肢が鞭のごとくしなり、ミラの防御の上からお構いなしに連続で打撃を浴びせ始めた。
傍から見るとまるで踊りのような動きで、一つ一つの攻撃の合間というものが存在しない。
一見大振りにも見える攻撃は、次の攻撃の勢いをつけるための動きになっているのだ。
絶え間なく鈍い音が響き続けていたが、虐者が思い切り振りかぶった右こぶしをミラに当てたまさにその時、ミラの上半身が不自然に後ろへ倒れた。

「!?」

まるで空振りしたかのような錯覚に陥り、虐者はその場でバランスを崩した。
そしてミラは、足をたたんだ状態で逆立ち状態になり、がら空きになった虐者の顎めがけて、バネのように一気に身体を伸ばして下から蹴りを放った。

アークスシップの天井近くまで吹き飛ばされる虐者。

「ぬぐアアッっ……!!」
(全部受け止めていたのか……!)

うめき声を上げる虐者の背後に、すかさずミラが飛び込み、強烈な回し蹴りを彼の背中に叩き込んだ。

「ごはっ!!」
「こんな程度で済むと思うな……貴様は、絶対に……!」

虐者が落ちてくる場所に先回りし、その腹に膝蹴りを、立て続けに上から殴りつけて地面にたたき伏せた。

「許さない!」

殺気を込めた言葉とともに叩きつけるように、ミラはその右脚で思い切り足元に転がる虐者を蹴り飛ばす。
ボールのように転がっていく虐者を見て、しかしミラはまだ攻撃の手を緩めなかった。
すぐさま虐者に近づき、首をつかみかかるが―――

「フン!!」

あおむけに倒れた状態から、虐者が素早く蹴りを放つ。
不意打ちに反応できなかったミラは、その蹴りを無防備なまま右手に受けてしまう。
ミラの右腕からきしむような音が響き、腕が妙な方向に曲がった。

「うぐああああっ!?」

ミラが痛みにひるんだその一瞬の隙に、虐者は素早く跳ね起き、彼女に向ってとびかかった。

「形勢逆転だ」
「ッ……なめるなッ!!」

折れた右腕をだらりと下げつつも、ミラは襲い掛かってきた虐者の蹴り、ストレート、後ろ回し蹴りの流れるようなコンビネーションを左腕一本で防ぎきる。

「ッッてやあっ!!」

直後に雷のフォトンを左足にまとい、虐者の顔めがけて左回し蹴りを放つミラ。

「……!」
「残念だが、この俺にそんな生半可な攻撃は効かんぞ……!」

ミラの蹴りを受け止めた虐者の腕で、電流がはじけるような音がパチパチと鳴っている。

(だめだ……!右腕が使えない状態では、バランスが……蹴りの威力が足りない……!)

彼は何事もなかったかのようにミラの脚を払いのけ、再び乱打の構えに入り襲い掛かる。
これをミラは先ほどと同様、腕一本の防御と回避でなんとかしのぎ続ける。

「ぐっ……くうっ……!」
「……ククク!」
(この女、体術に関しては俺よりも確実に上手!これほどのヤツは今まで生きていて見たことがない、凄まじい女だ)
「だが!」

虐者は勝利を確信するように目を見開いて笑った。
虐者はミラの防御の隙間に、鋭い蹴りを打ち込む。

「ぐああっ……!」

後ろへ吹き飛び、シップの船に叩きつけられるミラ。
その衝撃でほんのわずかだが、一瞬意識を失い、虐者はその一瞬を逃がさずにミラの腹部に全力の飛び蹴りを放った。

「ごふぉあッ……!??……げほっ……」
「右腕がそれではこうもなろう、無謀が過ぎたな……そらもう一丁!」
「うあああああああっ!!!」

さらに、もう片方の腕を蹴りで骨折させられ、ミラは激痛に耐えかねて悲鳴を上げた。

「これで何もできまい」
「あああっ……ぐ……あ……」

満足げな笑みを浮かべ、虐者はどこからか拳銃を取り出し、その銃口をミラの額につきつけた。

「これで終わりか……まあ、中々楽しめたぞ。威勢がいいし、実力も悪くない……特に体術に限れば、お前ほどのヤツは見たことがない。贅沢を言えば、少しばかり勝とうという意思というか、勝負そのものに対する執念が希薄な気もしたが……」
「ぐ……くぅっ……」

歯を食いしばり息を荒げながら、ミラは虐者の顔をにらみつけていたが、
ゆっくりと顔を伏せると、小さくあざけるように笑い始めた。
その様子に、虐者は訝しげに眉を顰めた。

「おしまいか……?」
「……?」
「両腕を折れば勝ちなのか……お前の戦いは」
「私はまだだぞ……」

ミラは両腕をだらりと下げ、よろめきながらも虐者の目の前で再び立ちあがった。

「私は……貴様のようなカス野郎をぶん殴るのが大好きなんだよ」

虐者はそのミラの言葉に対し、鼻で笑うように小さく息を吐いた。
その顔に湛える笑みは、さらに怪しさを増していき、まさしく狂ったような表情に変わっていった。

「ハハ、ククク、最高だな、お前は……それならさっさと、お前を殺してしまおうかァ!!」

懐から短剣を取り出し、獲物に襲い掛かる虎のように凄まじい勢いでミラに襲い掛かる虐者。
ミラはその場から動かずに、腰を落とし、腕をゆっくりと上げて正拳突きの構えを取った。

「!!!?!?!?」

虐者は咄嗟に防御の構えを取るが、虐者の腕が道を閉ざし切るその前に、ミラの渾身の正拳突きが虐者のみぞおちを貫く。

「……ぐはッ……な、んだと……?」
「お前、その腕は……」
「……快気功」

息を切らしながら、ミラは両手首を軽く振ってみる。
鈍いような鋭いような、得も言われぬ痛みが手首から肩にかけて走る。

(っ……! 時間稼ぎの間にできる回復じゃ、この程度が限界か。しかも右腕は特に酷い、今の一撃でも少し痛めたか……)
(だが、問題ない。ここまで回復できれば、バランスを取る分には問題ない!)

歯を食いしばって痛みに耐え、ミラは両拳を強く握り、地を強く蹴った。
弾丸のようにとびかかってくるミラに対し、今度は虐者が咄嗟に防御の構えを取った。
その表情にもはや余裕はなく、あるのはただただ焦燥のみだった。
しかしミラは、その虐者の目の前で突如立ち止まり、脅すように彼を睨みつけながら言葉を放った。

「地獄を見るよりひどい目にあうぞ、貴様」
(この女ッ……!!!)

直後、疾風のフォトンをまとった前蹴りが虐者の腹部に突き刺さる。

(受けが……間に合わん……!)

ミラは様々な蹴りを組み合わせたコンビネーションで、虐者の防御の隙間から次々と蹴りを打ち込んでいく。
虐者が避ければその先に蹴りを放ち、受ければもう片方の足で素早く防御しきれていない個所を蹴り込む。
虐者の表情にも疲労が見えはじめ、回避もまともに行えなくなりつつあった。

「ぐっ……がっ……!」
(顎が落ちた!)

虐者の体勢がぐらりと崩れ、身体がくの字に折れ曲がる。
ミラはすかさず、虐者の顔に向かって蹴りを放つが、虐者はこれを両手で受け止め、勢いを受け流すように後ろへ大きく飛ぶ。

(逃がすか!)

ミラが空中にいる虐者に向かって走り出したその時、突如地面から巨大な刃が突き出し、ミラに襲い掛かってきた。

「うわっ!?」

咄嗟に後ろに飛びのいたが、刃はミラの頬をかすめた。
赤い血が一筋、ミラの頬を冷や汗とともに伝った。

(あ、危なかった……なんだ、今のは……!?)
「やめだ」

遠くから聞こえる虐者の声に、ミラはその方を注目した。
彼の背中には、4本の大剣が浮遊しており、両手には赤い刀身の大剣が握られていた。

「体術勝負は俺の負けだ、おとなしく負けを認めよう」
「だが……本当の勝負はここからだ、もう少し楽しませてもらおうか……!」

再び禍々しい笑みを湛え、怒りさえも混じったような表情を浮かべる虐者。
しかし、ミラはこれに全く怯む様子もなく、自ら虐者に向かってゆっくりと前進していった。

「……勝手にしろ」
「私も貴様をこんな程度で許すつもりはさらさらない」



ツヅケタイ
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