月刺虐者 vs ミラ・アルタイル 2

ミラ「私も貴様を……こんな程度で許すつもりはない」
虐者「俺を許さないだと?フフフ……意味が分からんな」
虐者「わからんが、楽しませてくれるのなら!俺はなんでもいいぞ!」




虐者は右脚に力を込め、思い切り地を蹴った。
アークスシップの床が抉れると同時に、その場から虐者の姿は消え、瓦礫だけが残る。
そして直後、ミラの背後、上空から虐者が切りかかった。

(どうだ!このスピードはついてこれ―――)
「遅い!!」

ミラは刃を紙一重で躱しながら振り向き、矢のように鋭い正拳を虐者の腹部に打ち込んだ。

「がはっ……!」

衝撃波がアークスシップの壁を叩く。
虐者はその衝撃波とともに吹き飛び、壁に叩きつけられた。

「ぐ……クク、いかんいかん。闘いの勘を忘れている」

何事もなかったかのように地面に降り立ち、首を2,3程傾ける。

「何しろお前のような猛者と闘うのは数年ぶり。 グラールにいた頃以来なのでな……!?」

虐者の気がミラに向くその前に、ミラは虐者の懐へ飛び込んでいた。
ミラが一瞬正拳を構え、虐者はそれに合わせて腹を腕で覆うように防御した。
しかしその正拳はそのまま腹に向かって直進はせず、鋭く軌道を変えて虐者の顎を直撃した。

(フェイント……!)
「弱い!」

身体を思い切りひねり、渾身の蹴りをさらに顔に当てる。
再び吹き飛び、アークスシップの壁に叩きつけられる虐者。
満身創痍に見えるが、その顔にはまだ笑みが残っていた。

「く……くく、素晴らしい……!」
「コイツ……不死身か……!?」
「わざわざクソ遠い地球から来た甲斐があるというものだ」

虐者は腰を低く落とし、全身に力を込めていく。

「この俺はBEEとして覚醒したとき、”想像”の能力に目覚めたが、それよりもさらに強力な武器を手に入れた」
「それは反射神経と動体視力!地球ではいかなる相手の攻撃も当たることはなかった、無論弾丸などゼロ距離で発射されようが確実に躱せる!」
「……何が言いたい」
「お前はこの俺に攻撃を何度も当てている!素晴らしいと褒めてやろう!」
「貴様に褒められても微塵も嬉しくない。褒める前にとっとと謝罪しろ……ルーノを侮辱したことを、訂正しろ!」

虐者はミラの言葉に答えることなく、さらに力を込めていく。
次第に周囲の空気、フォトンが揺れはじめ、虐者の周りには銀色の粒子のようなものが舞っていた。
それはまるで、雪のようにか弱く美しく、しかし荒波のように激しい、得体の知れぬ波動のようなものであった。

(コイツも、ルーノと同じでフォトン以外の何かを操るのか!気の性質が変わった……ッ!!)
「光栄に思うがいい!この月刺虐者が全力で相手をするのは……貴様で3人目、そしてこのオラクルでは初めてだ!!」

叩きつけるような声とともに、虐者はミサイルのようにミラに向かって一直線に突進した。

「ぐあああっ!?がっ……あぐっ……!?」

白銀の軌跡だけがその場に残り、ミラは虐者の姿を全く視認できないまま、身体を切り刻まれてゆく。

(な、なにが……起こって……)
「うおおおおおおおッッ!!」

虐者の咆哮とともに、ミラの背中を尋常ならざる衝撃が襲う。
血を吐きながら吹き飛び、意識が朦朧としていくが、かろうじて着地し、体勢を立て直すミラ。

「げほっ……けほっ……!」
(クソっ……まずい、ダメだ!意識を途切れさせるな……見ろ、必ず見えるハズだ……!)

ミラは腕で口の血を拭い、正面を凝視する。
白銀の軌跡が鋭角を描きながら、左に右にとすさまじい速度で移動しながらミラへ近づいていく。
その光の中を見るミラの瞳に、虐者の姿は映らなかった。

(や ば い っ … … !)

背筋に悪寒を感じ防御の体勢を取ろうとした刹那、肩から腹にかけて斜め。
灼熱を叩きつけられたような感覚がミラを襲った。

「う……あ……っ」

ミラの胴体に刻まれた、一筋の剣の軌跡から鮮血が噴き出し、正面に現れた虐者の顔に吹きかかる。
ぎらぎらと目を輝かせ、口の両端はつりあがり、まるで悪魔のような表情だった。
ミラの目は光を失い、その場に力なくあおむけに倒れた。

「ふふふ……弱いな。やはり本気の俺を楽しませるほどではなかったか」
「これでは、お前より強いルーノとやらの実力もたかが知れているな」

虐者はわざとらしい呆れ口調で、ミラを挑発した。

「……ぐッ……!」

肩と足を震わせ、今にも倒れそうな姿になりながら、しかしミラは立ち上がった。
一瞬失ったと思われた瞳の光は、より一層強く輝いている。
虐者はその様子を見て満足げな笑みを浮かべながら、剣先をミラに向けた。

「……クク、そうでなくては」
「負けて……たまるかッ……貴様なんかにッ……!!」

歯を食いしばり、拳を握りしめる。
心の奥底で燃える炎を解き放つかのように、ミラの瞳が光った。

「!」
「貴様にだけは……」

刹那、ミラの身体は消えた。
まさしく瞬間移動のような速さで、虐者の目の前に現れ、虐者の左手の剣を蹴りで弾き飛ばす。
そしてそのまま力強く地を踏みしめ、渾身の力で拳を突きだした。

「勝つ!」
「ッ!!!」

正拳が虐者の頬に触れ、形を歪ませていく。
やがてその柔らかい感覚が、段々と骨と骨とがぶつかっていく固い感触になるのを、ミラはスローモーションで感じ取っていた。
だが、ミラの表情は勝利を確信した笑みに満ちていた。
だが、それは虐者も同様であった。
ミラの拳が虐者の頬をとらえると同時に、虐者もまた短剣を咄嗟に取り出してミラの腹部へ突き刺さんとしていた。

直後、これまでよりも遥かに激しい衝撃波が二人から発せられ、砂煙が辺り一帯を覆った。

やがて砂煙が晴れたそこは、先ほどの闘争からは想像もつかないほどの静寂に包まれていた。
仰向けに倒れる人影と、息も絶え絶えで脚を震わせながらも、確かに立っている二つの人影。
そして荒れ果てたアークスシップが、激闘を静かに物語っていた。




ミラ「……やった」
ミラ「……く、くく、あははは……!あはははは!」
ミラ「ざまあみろ……!はははっ……やったぞ、やった……!」
虐者「……」
ミラ「はあ……はあっ……」
虐者「……!」
ミラ「……!?」
虐者「よっと!」
ミラ「なっ……!!?」
虐者「……いってて」
ミラ「そ、そんな……」
虐者「……驚いた。 まさかこの俺が気絶させられるとはな」
虐者「こんなことはグラールでもなかった」
ミラ「化け物がっ……!」
虐者「ふん、俺に勝ったお前の方がよっぽどバケモノだ」
虐者「勝負はまだついていないが、試合なら今のは俺の負けだ」
虐者「一時的とはいえ、完全に気を失ってしまっていたしな」
虐者「認めよう、お前のその強さ。 お前の慕うルーノという男」
虐者「どちらもいずれ必ず、俺が倒して見せる!試合には負けた、だが勝負では同じ結果になると思うなよ!首を洗って待っているがいい!」
ミラ「ッ貴様!逃げるなっ……ぐっ……!」
ミラ(……くそっ、逃したか)



ブラッド「虐者に会ったああああー!?」
ミラ「ああ、間違いない。お前の言う特徴にがっちり当てはまっていたし、何よりお前のことを知っていた」
ブラッド「そうか……あいつやっぱりオラクルに着いてたのか。取り敢えず一安心だな」
ブラッド「ったく、連絡もよこさねえで何考えてやがるんだか」
ミラ「何も考えてないに決まってる。あんなに頭からっぽな人間初めて見たぞ」
ブラッド「ずいぶん激しく闘り合ったみたいだねえ、ひでえ傷」
ミラ「……あんなヤツと仲間やってるなんてお前ら本当にどうかしてるぞ」
白刃「まあ、確かに口は悪いですよね」
ミラ「口が悪いなんてもので済むか? 自分に似ているっていう理由だけで……」
白刃「多分それは、単純にミラさんと戦いたくて挑発してただけだと思いますよ」
ミラ「なに?」
白刃「兄さんは、本当に純粋に戦闘を楽しむ人ですからね」
白刃「ミラさんの強さを見抜いて、いてもたってもいられなくなっちゃったんですよ。きっと」
ミラ「全く迷惑な男だ……しかしまあ、確かに強い」
ミラ「本当に人間かと疑うレベルだ……だが、逆に言えば疑うレベルでしかない」
ミラ「完全に私たちとは別の存在だとわかるルーノには、絶対に及ばないな」
ブラッド「ミラちゃんもほんとルーノ君好きねー」
ミラ「なっ……!?違う!お前たちはわからないのか!?あいつはどう考えても―――」
白刃「言いたいことはわかりますよ。私たちもそう思いますし」
ブラッド「ミラちゃんって会話してると大体途中で必ずルーノ君が出てくるからさ」
白刃「そうそう、私の兄さん好き度合いといい勝負ですよ」
ブラッド「もはや変態の領域だよね」
白刃「ですねー」
白刃「今さりげなく私のことも変態呼ばわりしましたよね?」
ブラッド「……」
白刃「……」
ブラッド「…………さてと」
白刃「さてとじゃないでしょうがああああああ!!!アンタのその頭蓋カチ割って脳みそ丸焼きにしてやるわあああ!!」
ブラッド「だああああああああ!うるせえ!事実だろうが!深夜に兄の布団に潜り込むやつが正常な筈はねえ!」
白刃「人のこと言えたクチですかこの夜這い男!」
ブラッド「夜這いは仕事なんだよ!」
白刃「最ッッ低!!!」
ミラ(……ダメだこいつら、どっちも変態だ)


おしまい
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