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ミラ・アルタイル vs ルーノ ~1.心に炎~

ルーノ「……」
ブラッド「ルーノ君待ってえええええ」
ルーノ「大丈夫だ、ちゃんと待ってるぞ」
ブラッド「優しいんだね……結婚しよう」
ルーノ「……」
ブラッド「待ってえええええ」
ルーノ(もう待たない)

ブラッド「ふー……しまった、見失っちまったぜ」
ブラッド「ルーノ君助けてー!未開の地で一人ぼっちなんて飢え死にしちまうよー!ルーノ君ー!!」
ブラッド「……」
ブラッド「帰ろ」
ブラッド(あーあ、女の子どころか男の子にまで嫌われちゃうなんて)
ブラッド(やんなっちゃうよ全くもう)



ブラッドは力ない足取りで、ナベリウスの土を踏みしめ、来た道を戻っていった。
うなだれたまま歩いていると、突然あたりが暗くなる。

「……お?」

妙な様子に、少し周囲を見渡すとどうやら暗くなっているのは自分の周りだけであることに気づくブラッド。
どうやら、巨大な何かの影に包まれているようだった。
そのまま顔を正面にやると、自分の身長の優に3倍はあろうかという巨大なモンスターが。

「あ……なんだこれ、なんか見たことあるぞ」

ブラッドの目の前には、岩をまとったような巨大な図体の生物、ロックベアが立ちふさがっていた。
その巨大さに圧倒されるでもなく、ただのんびりと眺めているだけのブラッドに、ロックベアは思い切り右手を振りかぶる。
直後、そのままブラッドに殴りかかるが、すっと半歩後ろに下がり、難なくそれを回避するブラッド。
すさまじい風切り音がブラッドの顔面を叩く。
しかし、ロックベアも勢い余ってその場にあおむけに転がってしまった。

「……これは、逃げるがかーち!」

素早く後ろを向いて走り始めたブラッド、そしてそれと同時にその横をかすめる一陣の風。

「お!?」

ブラッドが後ろを振り向いたと同時に、その何かは地を抉って上空へと飛びあがった。
直後、それはロックベアの顔面に一筋の黒い光となって降り注ぎ、肉を潰すような不快な音とともにそこへ降り立った。
降り立ったその後ろ姿、足を前後にそろえ、腕は扇を思わせるように左右対称にゆらりと広げ、美しさと強さをその身から直接放っているような、そんな雰囲気を受ける人間の後ろ姿だった。
髪は肩程までしか伸びておらず短く、細身ではあるが背後からでは男性か女性か区別がつかない。
金色の髪は太陽の光に照らされ輝き、その美しい造形を一層際立たせた。
事実、ブラッドもその人間の姿に目を奪われていた。

まもなく、ロックベアは塵となってナベリウスへ消え、はナベリウスの大地に静かに降り立った。



ブラッド「……」
???「……けがはないか」
ブラッド「……え? あ、ああ!」
ブラッド「もちろんだぜ!」
???「ならよかった」
ブラッド「いやあ、やっぱすげえや。アークスってのは」

ブラッド「君みたいなちっちゃな男の子でも、あんなでけー熊みてえなやつを一撃だもんなあ」
ブラッド「イケてるけどクソ雑魚なお兄さんは、顔に傷がつかないうちに帰るとするぜ」
???「……待ってくれ」
ブラッド「おん?」
???「少し、聞きたいことがある。助けた見返りというつもりはないが、答えてもらいたい」
ブラッド「おう、いいぜ。答えられることならな」
???「時間は取らせない。聞きたいことは至極単純だ」
???「今、ある人物を探している。名前はわからないが、見た目が特徴的だからすぐにわかるはずだ」
ミラ「もし、そんなヤツを知っていたら、そいつに関する情報……どんな小さなことでもいいから教えてほしい」
ブラッド「そのくらいならお安い御用だぜ」
???「助かる……で、特徴なんだが、身長は170~180cmくらい、常に無表情、目つきは鋭い。黒髪を後ろ手に結っていて、一本だけ……こんな具合に髪が立っている、17~20歳くらいに見える若い男。服装は黒のロングコートに黒のズボン、全身黒ずくめだ」
???「ずいぶん昔の話なので、服装については変わってるかもしれないけど……そんな感じの男を見たことはないか」
ブラッド「おう!聞いた限りめちゃくちゃ心当たりのあるヤツを二人知ってるぜ!」
???「なんだと!?ふ、二人?!」
ブラッド「まあ、今案内できるのは一人だけなんだけど……」
???「その一人だけでもいい、教えてくれ。そいつは今どこに?」
ブラッド「さっきまで俺と一緒に行動してたけど、見失っちまってさあ」
???「……一緒に? 貴様、まさかその男の仲間なのか」
ブラッド「え? そうだけど」
???「!」
???(……なるほどな、。しかし、今殺してはヤツの居場所もわからなくなる……)
???(コイツを殺すのは、ヤツの始末が終わってからだ)
ブラッド「あ、ちょうどあそこに!」
???「……そうか、すまないが少し呼んでくれないか」
ブラッド「オッケー」

ルーノ「……ん?」
ルーノ(ブラッド……後ろに誰かいるな)
ルーノ(民間人でも保護したのか……)
ブラッド「おーい、ルーノくーーーん」
ブラッド「ったくひでえじゃねえかよ置いてけぼりなんて」
ルーノ「ああ、すまなかった……目標を見つけたからな、手早く片付けておきたかった」
ブラッド「そういうことかあ」
ブラッド「あ、そうそう。この人がルーノに用があるんだって。知り合い?」
ルーノ「……いや、俺は会ったことがない」
ルーノ「それからブラッド、多分男じゃない、この人は女性だ」
ブラッド「え!ウゾ!?」
???「……」
ルーノ「……?」
ブラッド「あー、えーと、その。ごめんなさいでした!いやあ、あんまり強いもんでさ!だって素手でロックベア一撃だぜ!?」
???「私を、覚えていないか」
ルーノ「……わからない」
???「ふ、まあ……そうだろうな」
???「あの時の私など、虫けら同然だったろうからな。お前にとっては」
ルーノ「違う、俺は―――」
???「長かった……本当に長かった」
???「10年だ……ずっと、ずっとお前を探し続けていた……」
ルーノ「?」
ブラッド「(ッ……これは!)
ブラッド「さっすがルーノ君……隅に置けない男だぜ」
ブラッド「10年間も探し続けてくれるガールフレンドなんて……なんて……けなげなんだァ!俺も欲しいぜ……!ちくしょうう……」
ルーノ「違うと思うぞ」
???「……ようやく、ようやくこの時が来たんだ」
???「遂に見つけたぞ」




「思い出させてやろう、少しずつ……徐々に悪夢の泥沼にはまっていくようにな」
「私の名はミラ・アルタイル。貴様に壊滅させられた、惑星アニマで育った魔法拳士だ」

不敵な笑みを浮かべながら、ミラと名乗った少女はゆっくりと腰を落とし、戦いの構えを取った。
周囲のフォトンがゆらぎ、大地を震わせる。
この不穏な空気を感じ取っていないのは、唯一ブラッドだけ。
ルーノも、そしてミラも、お互いにこれから何が起こるのかを把握していた。
それを望まないルーノは、彼女に一歩歩み寄り、静止をかけようとした。
刹那、浮遊し始めたフォトンが一気にミラの右拳へと収束、ミラはその拳を怒りとともに握りしめた。

「知るがいいッ!!」

ミラの右拳が雷をまとったその瞬間、ルーノのみぞおちを貫いた。
ルーノの身体がくの字に折れ曲がり、足が地から離れる。

「がはっ……!?」

突然の出来事に、無防備でそれをくらってしまったルーノは、そのままうつぶせに倒れ込んだ。

「お、おいおい!何やってんだよ!」
「……教えてやろう、コイツは私の故郷を破壊し、多くの同胞を殺し……そして」
「私の両親を殺した男……いや、生物兵器だ!」
「……!」

ミラはよろめきながら立ち上がろうとするルーノの胸倉をつかみ、そのまますぐそばの岩壁に向かってルーノを投げつけた。
壁に叩きつけられ、磔になったルーノに、即座に飛び蹴りを見舞う。
ルーノは分厚い岩の壁の反対側まで突き抜けていき、遥か彼方まで吹き飛ばされていった。




ブラッド「……」
ブラッド(つええ……これ、俺で太刀打ちできんのか?)
ブラッド(ルーノは今くらいの攻撃じゃ死なねえだろうが……戻ってくるまでには時間がかかりそうだ)
ブラッド(なんとか時間を稼ぐか)
ブラッド「アンタ、ルーノが生物兵器っつってたよな」
ブラッド「どこでそれを知った」
ミラ「聞けば至極単純な話。今から10年前の話だ」
ミラ「私の故郷、惑星アニマはあの生物兵器に破壊しつくされた」
ミラ「私たちはアニマを守るために戦ったが、ヤツの圧倒的な力の前に、成すすべもなく……全てを奪われた」
ミラ「私の両親も私の目の前で殺された、ヤツの手によって」
ミラ「それ以来私は、ヤツを殺すために調査を進めた。だが、ヤツが生物兵器であるという情報を得るのはそう難しくはなかった」
ミラ「あの生物兵器は、どうも相当な頻度で生物を殺害しなければいけないようでな。アニマ以外でも同様の被害が確認された。アニマの属する銀河系ではもちろんのこと、他の銀河系の可住惑星でもな」
ミラ「それだけに……正体は知れても足取りは中々つかめず、結局この時を迎えるまでに10年という長い時間がかかってしまったがな」
ブラッド「10年前……」
ブラッド(やっぱ、ルーノの記憶に残ってない部分か)
ブラッド「惑星アニマを破壊した理由はなんだったんだ」
ミラ「それを聞いてどうする?正当な理由があれば仕方ないとでもいうのか?
ミラ「私はどんな理由があろうと、故郷を壊され、両親を奪われた被害者だ」
ミラ「私にはヤツを殺す”権利”がある!!」
ブラッド「……」
ミラ「私の目的は一つ、あの生物兵器に、同胞が、そして父さんと母さんが味わった痛みと苦しみを……同じ地獄を味わわせ、殺すこと」
ミラ「邪魔をするなら、たとえ誰であろうと容赦はしない。 ヤツの味方をするのは止めておいた方が身のためだぞ」
ブラッド「そういうわけにはいかねえな」
ミラ「……ほう」
ミラ「大量殺人者の肩を持つと……そういうことなんだな?」
ブラッド「いいぜ、それで」
ブラッド「俺にとっちゃ大切な仲間なんでな……見捨てると、他の仲間から白い目で見られちまうのさ」
ミラ「ふっ……自分の立場のためなら殺人兵器でも味方する、か」
ミラ「思った通りのカス野郎で安心したぞ、これで心置きなく殺せるなッ!」
ブラッド(あーあ、予定が狂っちまった……柄にもねえこと言うもんじゃねえな!)




すさまじい速度で飛びかかり、ブラッドの顎めがけて掌底を繰り出すミラ。
紙一重でブラッドは躱すが、直後に鳩尾を突き抜けるような衝撃が襲った。

「うおっ……」
(やべ……全然気付かなかったぜ。初手クリーンヒットもらっちまった……)
「フフフ……弱い弱い」

右手に力を込めながら、ゆっくりとブラッドに近づいてゆくミラ。
風のフォトンが拳へと収束していき、やがて辺りを切り裂く鎌鼬を形成していった。

「まあ、一応ヤツの居場所を教えてもらった礼だ。懐に飛び込み……心臓を抉り抜く……苦しまないよう一瞬であの世に送ってやる」
「なーめんなよッ……!」

ブラッドは懐からダガーを取り出し、突進してくるミラの首を狙ってそれを振り抜いた。
しかし、刃が肌に触れた手ごたえは感じなかった。
ミラは既に懐に飛び込み終わっていた、既にダガーの攻撃範囲の内側に入り込んでいたのだ。

(そ、それは、速すぎだろ……ッ)
「死ね」

ミラの手がブラッドの胸部と接触しようとしたまさにその瞬間、ミラは視界の右端に妙な光を感じ、手を止めた。
光が段々と迫ってくるのを直感的に感じ取ったミラは、舌打ちしながらその場を飛びのく。
直後、ブラッドとミラの間を、瑠璃色の光弾がすさまじい速度で駆け抜けていき、やがて上空で爆発を起こした。

「ルーノ!」

ブラッドが声をかけた先、上空には、黒い人影が浮遊していた。
ミラはその様子を見て、少なからず驚いた。

(あの生物兵器……浮くこともできるのか、もはや何でもありだな)
(ああいうマネができるとなると、逃げられる可能性はかなり高い……このカスは置いておくとして、まずはヤツの動きを止めるのが先決だな)

やがてその黒い人影はゆっくりと下降していき、遠くからはわからなかったルーノの表情も顕わになっていった。
漆黒の瞳は、まっすぐにミラだけを見つめていた。

「ふん、なんだ?仲間が攻撃されて怒っているのか。貴様にそんな感情があるとは思っていなかったが……一つ教えてやる、そうなるのはお前のせいだ。恨むなら貴様の今までの生き方を恨むんだな」
「ブラッドは関係ない、目的が俺なら俺を攻撃しろ」
「貴様が指図するな!」

ミラの怒号に、周囲の空気が震える。
草や葉が跳ねのけられるように揺れ、それがミラの心中の怒りがどれほどのものかを表していた。

「関係ないわけがない、貴様のような人殺ししか能のないカスの味方をするような奴など、等しくカスだ」
「……!」
「貴様への復讐が終わって私が次にすることは、貴様と同じような宇宙の害虫を、一匹残らず駆除すること」
「無論、貴様の肩を持つような奴は皆殺しだ」

獲物を目の前にした肉食獣のように、低い姿勢で今にも襲い掛からんとするミラ。
ブラッドはルーノに加勢しようと一歩前に出たが、ルーノは小声で下がってろと一言静止した。

「ブラッドはひとまずクロスのルームまで逃げてくれ、俺もすぐに向かう」
「けど……よ」
「俺なら大丈夫だ、行ってくれ」

ブラッドは躊躇いながら後ずさりしていたが、ルーノの眼の決意を確かめると、背を向けて全力で走っていった。
無論それをミラが逃がすはずもなく、ルーノの頭上を飛び越え、素早くブラッドへ突進していく。

「この私から……逃げられると思うのかッ!」
「待て」
「ッ!?」

しかし、ミラの目の前に突如としてルーノが現れ、ミラは思わず大きく後ろに飛びのいた。

(コイツ……いつの間に前に……)
「……すまないが、ブラッドには関係のないことだ、ここは退いてもらった」

ルーノの言葉を受け、ミラは嘲笑するように鼻で笑った。

「……ふ。人殺ししか能のない貴様に、そんな仲間意識があったとは」
「……」
「あるいは、一人で死ぬ覚悟ができたということでもあるか?」
「どう受け取ってくれても構わない」
「ふふふ、いい心構えだ。 だが、すぐにそれも打ち砕いてくれる」

半ば笑みを浮かべながら、ミラはルーノへとびかかっていった。
矢継ぎ早に左右の正拳が弾丸のごとくルーノの顔面へと突き出される。
しかし、これを上半身を柳のように柔らかく揺らし、すべて躱していくルーノ。

「……!」
「中々やるな!」
「……」

躱していくだけで反撃する様子のルーノに、ミラは舌打ちを一つうつ。

「貴様、手を抜いて勝てるなどと思うなよ」
「……」

さらに右拳を突き出すが、ルーノはこれも難なく躱す。
しかし直後、ミラは背を弓のようにそって右脚を背中へやり、ルーノを見据えたまま足裏で彼の顔面を蹴るという芸当を披露した。
これにはルーノも反応しきれず、顔面に蹴りを直撃させられてしまった。

「……」
「ふふ、舐めているからだ」

ミラは得意げに挑発し、おもむろにすぐそこの巨大な岩に蹴りを放った。
岩は粉々に砕け散り、さらにそこから破片が爆破され、巨大な岩は文字通り跡形もなく消え去った。

「私が全力を出せば、貴様もあの岩と同じようになる」

ミラはふわりと空中に飛びあがった。
直後、足に風のフォトンをまとい、ルーノに向かって一直線に下降しながら飛び蹴りを放った。

(フォトンと同時に体術を……そんなことができるのか)

後ろに下がってなんとかそれを躱すルーノ。
ミラは一呼吸おいて力を溜め、拳にも風をまとわせる。

「泣こうが、喚こうが、貴様を許しはしない!」

再びミラがルーノに襲い掛かる。
今度は四肢をすべて使ったコンビネーションで、機関銃のように絶え間ない連撃を繰り出した。
避けだけでは間に合わず、腕や足を使って受けも行い始めるルーノ。
しかし、風のフォトンがまるで鎌鼬のようにうねり、ルーノの皮膚を切り裂いていった。

「くっ……」
「弱い!」

ミラが怒号を放つとともに、強力な前蹴りがルーノの腹部へと刺さった。

「……っ!」
「フフ……中々の実力だが、貴様の力など所詮そんなもの。私に勝てるはずがない」
「私は勝ちたいのではなく、負けられない。正義のために戦っているのだからな」
「……俺も、勝ちたいとは思ってない」
「なに?」
「だが、どうすればいいのかわからない」




ミラ「どうすればいいのかわからないだと?」
ミラ「簡単だ。貴様は罪を償うために、今ここで死ねばいいのだ!」
ミラ「私の同胞、私の家族が味わったのと同じように、苦しみ、痛み、悶え、そして私に殺される!それが今貴様のすべきこと、すべき償い!」
ルーノ「……そうするしか、罪を償う方法はないと俺も思っている」
ルーノ「だが、俺はまだ死にたくはない」
ミラ「……なに?」
ルーノ「俺はお前の言う通り、生きていてはいけないと思う」
ルーノ「お前の言う通り、俺は生物兵器としていくつもの生命を無意味に奪ってきたんだろう」
ルーノ「だが、そんな俺でも、必要としてくれている仲間がいる」
ルーノ「今も待ってくれている仲間がいる」
ルーノ「その仲間を悲しませたくはない」
ルーノ「俺はそこへ帰りたいと、思っている」
ミラ「ふざけるな!」
ミラ「貴様にそんな権利は、ない!」
ミラ「たとえその仲間がお前を必要としていようと……関係ない!」
ミラ「人殺しを必要とするようなヤツなど、どうせ貴様と同じカスだ!」
ルーノ「……」
ミラ「まとめてあの世に送ってやる!仲良しごっこがしたいなら、そこでするんだな!」
ミラ「死ぬ覚悟もできていないくせに、罪を償うだと?笑わせるな!」
ミラ「貴様に死以外の償いなどありはしない、貴様の存在そのものが既に罪なんだ!」
ミラ「すべてにおいて不愉快ッ!万死に値するッ!!」
ルーノ「……!」



ミラは怒りの表情を顕わにし、すさまじい速さでルーノの懐に潜り込んだ。

「遊びはここまでだ、死んでもらう!」

そのままルーノの服の襟をつかみ、岩場に向かって投げつけた。
ルーノは岩場に叩きつけられ、その衝撃で周囲の岩が大きく凹む。
さらにミラは、岩場にはりつけになっているルーノの胸部に飛び蹴りを見舞う。
立て続けに炎のフォトンを右拳に込め、それを先ほどと全く同じ個所に渾身の力で叩き込んだ。

「まだ死なないか!」

さらに雷のフォトンを左拳に、氷のフォトンを右拳に、風のフォトンを左拳に。
ミラは幾度も幾度も異なるフォトンを左右の拳に込め、無抵抗なルーノの胸部にひたすら打ち込み続けた。

「さあ、どうした!抵抗してみせろ!」
「がっ……!ぐっは……」
「そしてその抵抗を叩き伏せてやる……完膚なきまでに……!絶望し、恐怖し、泣き叫びながら死ぬがいい!」

ルーノの背にある巨岩にはひびが入りはじめ、今にも崩れんとしていた。
ルーノは抵抗する様子を見せず、ひたすらミラの殴打を受け続けている。

「……どうした!抵抗しろ!反撃してみろ!」
「……」
「……何を考えているのか知らんが、バカな男だ……貴様が反撃しないからといって、私が攻撃を止めるとでも思ってるのか」
「無抵抗なヤツを殴り続けるようなことはないだろうと……?」

右拳にありったけの力と炎のフォトンを込める。
怒りを顕わにしながらも、ほんの少しだけ迷ったような表情を浮かべたが、それはすぐに消し飛んだ。

「バカが……お前はそのまま死ぬんだ、みじめに、無様に……!」

ミラはルーノの鳩尾を的確に射貫いた。
爆発音と殴打の音がまざり、轟音となってナベリウスの大地を震わせる。
背後の巨岩はほどなくして崩れ、倒れたルーノを完全に埋め尽くした。

「ふん、一度の抵抗も苦痛の声も上げなかったか。 その我慢強さだけは褒めてやるが、無駄な努力だったな」

吐き捨てるように言いながら、ミラはルーノに背を向けて歩き出した。

「……ちっ、後味の悪い。 まあいい、次はコイツの仲間共だ」

しかし、そう呟くと同時に、背後で巨岩が転がる音、岩と岩がぶつかり合うがした。
ミラがふと振り向くと、そこには傷だらけになりながらも、両足でしっかりとルーノが立っていた。

「なん……だと!?」

ミラが初めて、驚愕の感情をその顔に表した。
目の前に立っている男に、微かながら恐怖も覚えていた。

「なぜだ、貴様……!」
「確かにお前には……俺を殺す権利、苦しめる権利がある……だが」
「仲間を傷つけるというその言葉、やはり黙って聞き過ごすわけにはいかない」

ルーノの言葉に、しばし呆然となるミラ。
しかしその後、顔を伏せて静かに笑い始めた。

「くっ……ふふふ、お前は本当に最低だな?」
「仲間という言葉を盾に、私を悪者扱いか」
「殺すことしか能のない兵器風情が人間気取りでべらべらと……一々癇に障るんだよカスがああああッ!!!」

憤怒の様子でルーノに急速に近づき、勢いそのままにルーノの顔へ拳を突きだした。
だが、ミラの拳は、ルーノの片手にやすやすと止められる。
ルーノの表情は、今までと全く変わりのない無表情で、黒い瞳も変わらずミラの瞳だけを見据えていた。
ミラはその様子を見て、本能的に絶大な恐怖を覚えた。
そして、その本能に間違いはなかった。
咄嗟に離れようとしたが、ルーノにつかまれた右拳は全く動かない。

「がっ……っぐうう……ッ!!」
「……」

ルーノは声も発さず、息も荒げず、ただ静かに左手に力を入れ始めた。

(な、なんて……力だ……こいつッ……!!)
「うぐ……!うおおおおおおおおおおおッッ~……!!」
「は、離せっ……くそがあああっ!ぬああああああっ……ぐっ……!!」
(お……折れ……っ……!?)

ミラの頬を汗が一筋、流れていく。
咄嗟に、ミラは拳を開き掌をルーノの方へ向ける。
歯を食いしばりながら、必死の形相でフォトンを集中させ、ルーノの顔へ向かって爆炎を撃ち出した。
衝撃で一瞬ルーノの力が緩んだすきに、ミラは素早くルーノの手を振り払い、大きく後ろへ飛びのいた。
掴まれていた右拳には痛みが残っているが、折れてはいないようだった。
ルーノを取り巻く炎はやがて少しずつ下火になり、土を焦がすだけの小さな赤い光となり、ルーノを照らした。
炎が直撃したであろう頬はやけどのような傷ができていたが、意にも介さぬ様子でミラを見据えている。

「その眼をやめろ……不愉快な!」

ミラは苛立ちながら、吐き捨てるように言った。
自分の力が通用しないことに苛立ちか、あるいは恐怖している自分に対しての苛立ちか。
その様子を見て、ルーノは全身の力を抜き、ふわりとほんの少し、宙へ浮きあがった。




ルーノ「安心しろ、折れてはいない……手加減はしておいた」
ミラ「手加減だと!?貴様ッ……!!」
ルーノ「俺へ恨みを晴らしに来る分には、いくらでも受ける」
ルーノ「だが、俺の仲間を利用して恨みを晴らすというのなら、今と同じようにお前を止めるしかない」
ルーノ「お前を殺すことはしない。俺の償いは、お前の、そして俺が殺してきてしまったすべての人間の、これから生きる道を守ること」
ルーノ「生きながらできる償いはこれが限界だろう、だからこの生き方を貫く」
ミラ「……ふざけるなよ」
ルーノ「生きたいというのは俺の我儘だ。 だから、その我儘が通らず、誰かの復讐を受けて殺されるのなら、それは仕方がないと思う」
ミラ「そんな生き方を認めると思うか?」
ルーノ「俺はそう決めた」
ミラ「逃げながら生きるのか……臆病者の腰抜けが!」
ルーノ「そうだ」
ルーノ「そうでなければ潔く死んでいる。だが、俺は死ぬのが怖い。レイやクロスと離れ離れになるのは怖い」
ルーノ「だから我儘だというのもわかっている」
ミラ「生憎とそんな我儘は通用しない!断言しよう……貴様が今、ここで死なないのなら仲間に危害が及ぶ!」
ミラ「どうだ、それなら貴様は死ぬべきじゃないのか!?今、ここで!」
ルーノ「……」
ミラ「それとも……それでも我儘を通すか?」
ミラ「仲間を守り、自分の身を守り、敵をも守る……そんな生き方ができると思うか……!?」
ルーノ「俺はそう決めた……俺も今日は退かせてもらう」
ミラ「ッッ~~~~この……!!」
ルーノ「……」
ミラ「待てッ!」
ミラ「いいか!覚えておけ!貴様にそんな生き方ができるはずがない!貴様は所詮生物兵器、人間ではない!」
ミラ「貴様は生きていることそのものが罪!償うならば死しかない!貴様が生きていることなど許されない!」
ミラ「貴様のその罪は……この私が、必ず裁いてやる!絶対に逃がさんからなァッ!」



ルーノ「……」
レイ「……ルーノ!」
クロス「ブラッドから聞いてたが、案の定すごい傷……でもないな、服がボロボロなだけか」
レイ「相変わらずのバケモノっぷりだぜ全く」
ルーノ「ブラッドは?」
レイ「あいつは大丈夫だよ、もう家に来てる」
ルーノ「そうか」
レイ「っていうか寝てる」
ルーノ「……そうか」
ルーノ「……」
ルーノ「すまない、二人とも」
クロス「……?」
レイ「ん?」
ルーノ「俺は、一時的にこのチームを離れた方がいいかもしれない」
クロス「……ほう」
レイ「え、なんで!?」
ルーノ「今日現れた復讐者、俺に死ぬ意思がなければ、俺に自分と同じ苦しみを味わわせるといっていた」
ルーノ「多分、レイやクロス……俺の仲間を襲ってくる」
レイ「……」
ルーノ「だが、ブラッドの顔を見られた以外は、クロスたちの情報は何一つない」
ルーノ「しばらくミラは俺だけを追ってくるはずだ……だから」
クロス「そいつは困るな」
ルーノ「……」
クロス「ブラッドの話じゃ、そいつはそこらのアークスとは格が違う強さなんだろ」
クロス「俺らが襲われたときに、お前という切り札が近くになかったら面倒くさいな」
レイ「……!」
レイ「そ、そーだよ!呼んだらきてくれる場所にいてくれなきゃ困るんだよ!」
レイ「っつーわけで、勝手にどこでもいくなよ!」
ルーノ「クロス、レイ……」
レイ「ちゃーんと守れよ」
ルーノ「……必ず」
クロス「……んで、話変わるがその服どうする?」
レイ「ぷぷっ……尻破けてるぜ」
ルーノ「あ、本当だ」
レイ「お前もう少し羞恥心ってもの持てよつまんねえ反応だな……」


ミラ(……)
ミラ(ヤツの力……あれで手加減していたというのが嘘でなければ……)
ミラ(単純な腕力だけはヤツの方がおそらく上だろう……だが、それでも私が負けるはずはない)
ミラ(最悪、真正面からやらずともいくらでも方法はある)
ミラ(せいぜい今の内に……仲間と楽しくやっていろ)
ミラ(私が貴様への復讐を始めた時、貴様は気付くだろう)
ミラ(貴様自身が決意した生き方の愚かさにな)
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