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ある研究員の手記2

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学者として”興味を持たない”というのは不敵な行動であろう。
しかし、そんなことは問題ではなかった。
そもそも私は、学者であるために学者をやっているのではない。
私の目的を遂行するにあたって、このポジションはベストに近い、ただそれだけのことだった。
私にとって、学者とは生き方ではなく手段なのだ。

興味を持たない、というのは何事に対してもというわけではない。
知ることの喜びのために興味を持つのではない、あくまでベクトルは目的達成のための必要な情報収集だ。

クローンの研究を始めてから1年が経った。
実戦テスト用の本格的なクローンを生成する段階に入っており、これがおそらく最初の作品となるだろう。
だが、生成にあたってまだ問題は残っていた。
その最たるものが、量産体制だ。

こんな研究は大っぴらに公開できるものではない。
何せアークス模倣体、言ってしまえばダーカーを我が手で生み出すような研究だ。
規模は違えど、私がやっていることは深遠なる闇やダークファルスらのそれと何ら変わりない。
それ自体に抵抗を覚えることは全くないが、内容が内容だけに量産は難しい。
人手を雇うことも、環境を整えることも一筋縄ではいかない。
最初の作品はどうやら上手くいきそうだが、最近はとにもかくにもこの問題に頭を悩ませている。

今日、全く別の研究部門の男から面白い話を聞けたのは運がよかった。
直接的な解決策とは成り得ないだろうが、久々に一つの知識として面白いと感じ、刺激を得られた。
これが閃きにつながってくれることを祈りつつ、忘れないようにここに記す。

量産、人間もとい生物でいうところの増殖。
その増殖方法は様々だが、とりわけ今日耳にした寄生虫の増殖方法には驚かされた。

吸虫性旋回病、別名ガラクトソマム症。
その症名の由来ともなっている寄生虫、ガラクトソマムによって発症する。
このガラクトソマムなる寄生虫は、幼虫期にはブリやカタクチイワシ、イシダイ、トラフグなどの魚類に寄生し、最終宿主をウミネコとし、ウミネコの体内で成虫となる。
とりわけ興味深いのが、ウミネコへの寄生方法である。

ガラクトソマムは、上記に挙げた魚類の間脳に寄生し、なんと宿主の脳をコントロールしてしまうというのだ。
こうしてガラクトソマムの意のままに操られるようになってしまった魚は、水面すれすれを常に泳いだり、同じ場所をぐるぐると旋回し続けたりするようになる。
すなわち”ウミネコに食べられやすくなる”ように行動し始めるのだ。
これが、ガラクトソマム症である。

脳に寄生し、宿主の意思を自在に操る。
おとぎ話やファンタジーの話のようだが、このような寄生虫は決して珍しいものではないらしい。
宿主とするところは違うが、ロイコクロリディウム、ジクロコリウムなども同様の生態を持つ。

寄生された生物は、寄生虫の意思に従う。
寄生虫の繁殖方法は複雑かつ考え抜かれた生存戦略と言えるが、行動パターンそのものは単純といわざるを得ない。
要は対象に食われることだけを目的としているのだ。
例に挙げたガラクトソマムは、人間に寄生することはないが、もしも同様の生態を持つ寄生虫がいたとして、人同士を媒介して増殖できるようになれば。
寄生虫が食われることではなく、喰うことを目的とするようになったならば。
それが寄生したクローンを多数創り出すことができるならば。

ここまで考えたが、いざというときにストップの命令を聞かないようでは、それはそれで面倒だ。
使えるか、使えないか……幸い時間はまだある。
ゆっくりと試させてもらおう。


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