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オーダーメイド ~あの赤い服を着て~

レイ「ルーノ!」
ルーノ「?」
レイ「お昼ごはん、どこがいい?」
ルーノ「どこでもいいぞ」
レイ「じゃあ寿司!ルーノのおごりでー」
ルーノ「わかった、いこう」
レイ「いいのかよ」

ミラ「……」
ミラ(……ダメだ、どうしても出来ない)
ミラ(ああいう自然な誘い方、自然な付き合い、仲間同士の他愛のない会話……!)
ミラ(付き合いの長さとか、出会い方とかが全然ダメだったのも要因ではあろうが)
ミラ(そんなこと気にしていたらいつまでたっても状況は変わらない)
ミラ(そんなわけで、ずいぶん前からコミュニケーションの取り方について勉強していた)
ミラ(本を読み、任務では見ず知らずのアークスたちと組み、円滑な連携を心がけた……)
ミラ(結果としては、初対面の相手とも問題なくコミュニケーションが取れるようになった。任務中であればルーノとであっても問題なく意思疎通ができるようになった、連携もしっかり取れている)
ミラ「だというのになんでだ!なぜだ!どうしてプライベートな用となると誘えないんだ!」
ミラ「……状況ひとつで、これほどコミュニケーションの難易度が上がるなんて本にも書いてない……聞いたこともない」
ミラ(……状況の応じたコミュニケーションが必要ということなのか。確かに、いつでもどこでも敬語で話すのは堅苦しい感じはある、もっとそういう柔軟な対応をまだ学ばなくてはいけないということか……ならばもう少し別の本で勉強を……)
ミラ「っえええええい!なんだこの陳腐な発想は!!」
ミラ「……こんなことで解決するようなものとは思えな……!」
白刃「……」
ミラ「……」
白刃「……」
ミラ「……いつから、そこに」
白刃「ごはんですよ」
ミラ「……」


白刃「いや、すみません。ものすごい怒声が聞こえたんで、入っていいのかどうか迷ってたんですけど」
ミラ「問題ない」
白刃「何か怒るようなことでもあったんですか?もしかしてブラッドさんのことですか?」
ミラ「……? いや、ブラッドは何も」
白刃「そうですか、じゃあなんでしょうね」
ミラ「逆に聞きたいんだが、ブラッドはそんな人を怒らせるようなヤツなのか。軽そうな雰囲気で、私はあまり相手にするのは得意なタイプじゃないが、そんなに悪い奴にも見えないんだが……」
白刃「3日に1回は人のパンツ盗むような人です」
ミラ「部屋に入って来たら問答無用でぶっ飛ばしてよさそうだな」
白刃「もちろんですとも」


白刃「コミュニケーションが取れない?」
ミラ「……恥ずかしながら、あなたやレイのように、あまりしゃべることが得意じゃなくてな……」
白刃「え、全然そんな風に見えませんよ。だってチームの人たちと普通に話してるじゃないですか」
ミラ「……」
白刃「……あ、ルーノさん」
ミラ「……隠してもしょうがないから言うが、そういうことだ……」
白刃(全然隠せてないけど)
白刃「まあ、確かにレイさんといることが多いですからね……手始めにお昼ごはんとか誘ってみたりとかはどうです?」
ミラ「まずそこから……難しくて挫折しているんだ」
白刃「あ、はい」
白刃「あれ?でも任務とか一緒に行ってるじゃないですか」
ミラ「ああ、任務は問題ないんだ。多分、戦いに夢中で、あまりルーノそのものに意識が向かないからだと思う」
ミラ「あと、運動した後だからあんまり緊張とかを感じないのかもな」
白刃「それならその上がったテンションそのままにお昼ごはん誘っちゃうのはどうですか?ついでに昼飯でもどうだーって感じで」
ミラ「……!!!」
白刃「たかがこのくらいで世紀の大発見みたいな顔しないでくれます?」



-Next Dayすなわち翌日-

ミラ「白刃さん」
白刃「?」
ミラ「……部屋に入ってくれ、早く」
白刃「……???」
ミラ「で、昨日の作戦の件なんだが」
白刃「いや、ちょっと待ってください話の流れがよくわかんないんですけど。なんですか作戦って」
ミラ「昼ごはんの件だ。その、ルーノとの」
白刃「……あ、ああ。え?それの報告ですか?いりませんよそんなの」
ミラ「いや、実は失敗して……」
白刃「……そうですか、じゃあ私は夜ご飯作らなきゃなのでこれで」
ミラ「ちょちょちょちょお願いだ!待ってくれ!ちょっと聞いてくれ!聞いてください!」
白刃(なにこの小動物)


白刃「10分だけですよ、魚焦げちゃうので」
ミラ「恩に着る。この借りはいずれ必ず」
白刃(重い)
ミラ「一応、ルーノを任務へ誘うところまでは上手くいったんだ」
白刃「はい」
ミラ「そのあと昼ごはんに誘おうと思ったんだが、その」
ミラ「声が出なくて……」
白刃「え」
白刃「ゑ」
白刃「エ」
白刃「エ」
白刃「「ェ」
白刃「ェ」
白刃「E」
白刃「e」

白刃(……今時そんな奥手ってありですか?化石かなんかですか!?)
白刃「上がったテンションそのままに行けないとなるともうどうしようもないんじゃ……」
ミラ「い、色々考えていたら急に熱が冷めてしまって……」
白刃「たとえば?」
ミラ「いや、誘って断られたらどうしようとか……おなか一杯だったらどうしようとか……無理に付き合わせるのも悪いな、とか思ってたら」
白刃「思ってたら?」
ミラ「ルーノが一人で食べに行ってしまって」
白刃「ついていけよぉ!!」
白刃「なんでそこで、「あ、じゃあね♪」ってなるんですか!?わけわかんないですよ!一緒にご飯食べるんじゃないんですか!?なんで自分から誘うところにこだわってるんですか、そんなところこだわってどうするんですか!?」
ミラ「こ、こだわってるつもりはないんだ……が、その……一人で落ち着いて食べたいのかなと思って」
白刃(……こ、これはちょっと難敵ですね)
白刃「あのですね、そもそも私に相談してもあんまり意味ないと思いますよ」
白刃「私だって、そんなに恋愛についてよく知ってるわけじゃないですし、ブラッドさんの方がよく知ってると思います」
ミラ「ち、ちがっ!まだそんな、そんな段階の話じゃなくて……」
白刃「……」



白刃「ということで、あまりにも難敵なのでブラッドさん呼びました」
ブラッド「ハロハロハローミラちゃん、恋愛マスターブラッドだよ」
ミラ「……パンツ泥棒を部屋の中に入れるのか、まあ致し方ないか」
ブラッド「人聞きの悪い!」
白刃「まあそれは事実ですし置いとくとして、事情を説明しますね」
ブラッド「そろそろ帰りまーーーーーす」
白刃「だめでーす」
ブラッド「みぎゅ」


白刃「じゃあ早速……ミラさんなんですけど、ルーノさんをお昼ごはんに誘いたいそうなんです」
ブラッド「うむ」
白刃「ところがどっこい、任務中は問題なく話せてても、いざお昼ごはんに誘おうとすると全然喋れなくなっちゃうらしいです」
白刃「お昼ごはんに限らず、そもそも気兼ねなく話す~ってことができないみたいで」
ブラッド「うむむ」
白刃「これってルーノさんに対する恋愛感情のせいで緊張してるんでしょっていう話をしたら、ミラさんは違うって」
ミラ「いや……そりゃ、違うだろう……」
ブラッド「そもそもそんな話聞かずとも普段のミラちゃんの行動みてれば一目瞭然だけどね」
ミラ「……?」
ブラッド「君のは恋愛というより」
ミラ「うむ」
ブラッド「変態だよ」
白刃「うがあああああッ!!」ドギャッ
ブラッド「ゲベッ!!!」
白刃「純真な女の子になんてこと言ってくれてるんですか!ミラさんはにわみたいになっちゃったじゃないですか!」
ブラッド「申し訳なすび」


白刃「ったく、しっかりしてくださいよ」
ミラ「……はい」
白刃「そっちじゃなくて、そこの」
ブラッド(そこの、って。あんまりといえばあんまりだこの扱い)
ブラッド「んー、まあ真面目に話すと、好きな人の前では緊張しちゃうよ。普通のことだよ」
ミラ「この気持ちは、やっぱりそういうことなのか……」
ブラッド「ルーノ君と話したい?」
ミラ「まあ……」
ブラッド「一緒にもっと任務に行きたい?」
ミラ「……まあ」
ブラッド「レイちゃんのポジションがうらやましい?」
ミラ「…………」
ブラッド「確定ですね」
ミラ「ぐ……」
ブラッド「でも、普段ズバズバものを言うミラちゃんからは考えられないねー、こんな一面があったなんて」
ミラ「正直、自分でも不思議なだ……感覚としては、何をしゃべっていいのかわからなくなる、頭が真っ白になるんだ」
白刃「で、何か対策はありませんか?任務の帰りについでに誘うのも厳しいみたいなんですけど」
ブラッド「恋愛の時に奥手になるタイプっていうのは、まあ色々な場合があるんだけれども、大別すれば2種類のパターンに分かれる」
ブラッド「一つは、相手が既婚とか、相手に別の好きな人がいるとか、倫理的に手を出しづらいからやめておこうっていうタイプ。もう一つは、単純に自分に自信がないタイプ。この人と自分は釣り合わないだろうな、この人は自分を好きじゃないだろうなってすぐ考えちゃったりする」
白刃「え、それって……ミラさんってどっちもありえそう」
ブラッド「ルーノ君には既にレイちゃんっていう長年……といっても1年だけど、共に過ごしてきた異性の相棒がいるわけだしなあ。ただ、ミラちゃんってそんなに自分に自信ないように思えないというか、自信を持つ要素はたくさんあるように思えるけどねえ」
白刃「料理は私と一緒にやってきて、大分一人でも作れるようになってますし、家事とかもお手伝いしてもらってますし」
ブラッド「仕事もきちんとこなすし、強いし、いいことづくめじゃん。俺がもらってあげるよ」
白刃「引っ込んでてください」
ミラ「……」
ミラ「……女性として自信があるかどうかと聞かれると、正直……全くない」
ミラ「そもそも、自分をそういう目で見たことがなかったから……」
ブラッド「んー?」
ミラ「うわ、ちょっ……ちかっ!」
ブラッド「……ふむ」
ミラ「……?」
ブラッド「いやね、ちょっとチェックしてみた」
白刃「ん?」
ブラッド「素材はいいもん持ってるけど、確かに女性として何もしてきてないね、これは。自信持てるはずないよ」
ブラッド「おしゃれとかもわからないでしょ」
ミラ「さっぱりだ」
白刃「どの辺がダメなんですか?」
ブラッド「全部ダメだししていいの?」
ミラ「ま、待ってくれ心の準備を……」
白刃「精神崩壊しない範疇でお願いしますよ」
ブラッド「では……まず肌カサカサ!ちょっとじっくり見たらすぐわかる。唇とかひっでえな、全然ケアしてない」
ブラッド「肘!普段居間でひじ着いたまま話したりしてるけどあれやめろみっともねえ!ほら、少しもう黒ずんでる!」
ブラッド「肘に圧力・摩擦などの刺激が加わると、こういう風に黒ずむ。そもそも肘ついてなんかするのって見た目にもよろしくないから。女性がそんなことしちゃダメだぜ」
ブラッド「あと髪!多少クセっ毛なのはかわいげあっていいかもしれないけど、これは最悪。何これ完全に寝癖でしょ。直しなさいよ」
ブラッド「しかもガッサガサ。リンス面倒だからってシャンプーだけで洗ってんでしょ。なめてんの?」
ブラッド「あと眉毛がなんで伸ばしっぱなしなのにマツゲがスカスカなの!?ありえないでしょ!絶対自分で抜いたりしてるだろこれ!」
ブラッド「いいか?今は若いからそんな適当な手入れでも何とかなってるがな、肌にも年齢ってもんがあるんだよ」
ブラッド「特に乾燥は肌にとっては大敵だ。シミやシワの原因にもなる」
ブラッド「それから―――」
白刃「ブラッドさんブラッドさん」
ブラッド「あ?」
ミラ「   」
白刃「もう完全に息絶えてますよ」
ブラッド「ありゃ」


ミラ「……自信があったわけではないけど……ここまでひどい状態だと改めて知らされると……もう」
ブラッド「そう、その外すら歩きたくなくなるような恥ずかしさが大事だ」
ブラッド「二度とこんな思いをしたくない、そう思った今日が、お前の生まれ変わる日だ!」
ミラ「……生まれ変わる」
ブラッド「そうだ!これから1カ月……ミラちゃんには自分が女性であることの自覚し、女性として成長するための修行をしてもらう」
ブラッド「そして自信をつけて、ルーノ君を真正面から誘うことができるようになれば!君は一人前の女性といえよう!」
白刃(随分大げさな気もしますけど)
ミラ「……自信を」
ミラ「……よし、わかった!やってやる……やるぞ!」
ブラッド「よく言った!」
ブラッド「そのためには、シャンプーの仕方などもレクチャーが必要だ、これからは俺が一緒に風呂に入ってやる!覚悟しろ!」
ミラ「なっ!?そ、それだけは勘弁してくれ!」
ブラッド「なにィ!?貴様ァ!貴様の覚悟はその程度なのかァ!?ああああ」
白刃「じゃ、そこは私がレクチャーするので。女性同士なら大丈夫ですよね?」
ミラ「……た、多分」
ブラッド「……」
ブラッド「ま、いいや。取り敢えずは基本的なとこからやってこっか。オシャレ方面は後からね。服とかアクセサリーとか」



ブラッド「ミラちゃんは化粧なんかしてないだろうから、関係ないと思いがちな洗顔から」
ミラ「……そんなこと思ってない。顔は毎朝洗うだろ普通」
ブラッド「お、いいことですねえ。じゃあ次は洗顔のやり方から見ていきましょう」
ミラ「やり方?」
ブラッド「取り敢えずいつも通りやってみて」
ミラ「……」
ブラッド「……どしたの」
ミラ「見られてるとなんかやりづら……」
ブラッド「俺も洗いてえんださっさとせんかバッキャラー!!!」
ミラ「うあい!」


ミラ「……ふう」
ブラッド「うーん点数を付けるなら」
ミラ「……」
ブラッド「15点」
ミラ「赤点もいいとこだよ!」
ブラッド「まず一つ、冷水はあまりよろしくない。前にも言ったけど肌は刺激に弱い」
ミラ「……つまり人肌と同じくらいがいいということか?」
ブラッド「そう、熱すぎてもだめ。最もよいとされる温度は、32℃といわれてる。手で触ってちょっと冷たいかな?と思うくらいだ」
ミラ「そんな温度だと、眠気が覚めなさそうだ……」
ブラッド「慣れだ慣れ」
ブラッド「それから、ガッシガッシ洗いすぎ。これも肌を傷める原因になる」
ブラッド「同じ理由で、タオルでゴシゴシこするのもダメ」
ミラ「でも……なんか肌がベタつくんだが」
ブラッド「洗顔の目的は余分な皮脂を落とすことであって、肌を保護する分の皮脂は残しておかなきゃいけねえんだよ」
ミラ「じゃあ、いくら優しく水で流そうと、長時間洗い続けてたら意味がないってことか?」
ブラッド「そういうこと。肌は本当にすぐ劣化するから、いたわる気持ちを忘れちゃダメよ」
ミラ(勉強になるなあ、割と本気で)


ブラッド「次に髪の洗い方なんだけど」
ミラ「一緒には絶対入らないからな!」
ブラッド「入りたいけど多分白刃ちゃんに妨害されるっつーの。事前予習だよ、予習」
ブラッド「ミラちゃんの場合、髪がガサガサだったから多分コイツを使ってないんだろうね」
ミラ「?」
ブラッド「リンス」
ミラ「なんだそれ」
ブラッド「シャンプーは髪の毛と頭皮を洗浄するもの。で、このリンスってのは髪の毛につける」
ミラ「……?」
ブラッド「乱暴に言うと、髪の毛の表面にツヤツヤにして、髪の毛を保護するためのもの」
ミラ「ほほう」
ミラ「そいつをつければいいのか?」
ブラッド「シャンプーの後にね。で、最後洗い流す」
ミラ「……???」
ミラ「つけたのに洗い流すのか?」
ブラッド「うん、洗い流していいんだよ」
ミラ「……?????」
ブラッド「……説明しても分かんねえと思うけど、洗い流すとリンスの中の有効成分、油分とか陽イオン系界面活性剤が髪の表面にくっついて、それがコーティングの役割を果たすんだよ」
ミラ「うむ、さっぱりわからん」
ブラッド「そんなこったろうと思った」
ミラ「とにかく、洗い流せばいいんだな」
ブラッド「まーそういうこった」


ブラッド「で、手順だけども、まずしっかりとシャワーで頭のゴミを洗い流す」
ブラッド「さっと洗うだけじゃなく、頭皮全体を水に浸すようなイメージで、十分な潤いを感じるまでだ。そうすることで、大体の汚れはや油は落ちる。この時、洗顔と同じ要領で温度が高すぎると頭皮にダメージを与えてしまう。温度は38℃前後がベストだ」
ブラッド「で、次にシャンプーだ。適量を手に取り、必ず手で泡立ててから頭皮を洗う。原液をそのまま頭皮につけると、すすぎでシャンプーの洗い残しが起こりやすくなる」
ミラ「やっぱり洗い残しも、肌へのダメージが大きいから避けた方がいいということか」
ブラッド「つーかダメージ云々以前に、普通に考えて洗い残したままなんて汚いだろ。ボディソープで身体洗った後、泡残したまま外に出るか?それと同じことだ」
ミラ「なるほど」
ブラッド「で、シャンプーは髪の毛はそこそこに、とにかう地肌を中心に洗うことを心掛ける。このとき、爪は立てず、指の腹でもみほぐすように優しく洗う。ガシガシ洗うのはもってのほかだ」
ミラ「……大体そんな気はしてた。わかってきたぞ」
ブラッド「だが、甘い!シャンプーで最も大事なのはこの洗う工程じゃない。さっきも言ったが、シャンプーは髪の毛に隠れて洗い残しが非常にわかりづらい」
ブラッド「しかし、この洗い残しこそが髪の毛トラブルにおいて最も原因になりやすい部分だ。細心の注意を払う必要がある」
ブラッド「こちらは洗顔とは逆に、やりすぎかな?と思うくらいしっかりすすぎ落とす。目安は3分~5分だ」
ミラ「結構長いな……」
ブラッド「もちろんここでも爪を立てるのはNG」
ブラッド「最後にリンスだ。リンスはさっきも話した通り、髪の毛を保護するために油分が含まれているから、頭皮にはつかないように注意する」
ブラッド「髪の毛に練り込むように、浸透させるように、なでるように」
ブラッド「あとはリンスを洗い流す、ここも優しくなでるように。どちらかというとシャワーの水圧で流すようなイメージだ」
ミラ「…………」
ブラッド「ま、一気に詰め込まなくても白刃ちゃんならきっちりレクチャーしてくれると思うからよ」
ミラ「……白刃さんと一緒にか」
ブラッド「まー確かに気は引けるだろうね」
ミラ「いや、そういうのではないんだが……単純に恥ずかしい」
ブラッド「まー確かに恥ずかしいだろうね」
ミラ「……どこ見て言ってるキサマ……」
ブラッド「三途の川が見えそうだぜ」


ミラ「ふあああああ……経験したことのない一日の流れだったから疲れてしまったな……」
ミラ「今日は早く寝よ……」
ブラッド「おいコラァ!!何勝手に寝てんだバカヤロ!」
ミラ「うおあああああ!?」
ミラ「な、なんだなんだ!?まだ何かあるのか!?」
ブラッド「洗面所にこい」
ミラ「……?」


ミラ「あの、歯はちゃんと磨いたぞ」
ブラッド「当たり前だバカ。顔は洗ったのかよ」
ミラ「か、顔?」
ミラ「風呂でちゃんと洗ったぞ」
ブラッド「風呂に入ると汗をかくだろ。それに、そのあと飯だって食ってる。今日は疲れてやってねえだろうけど、ミラちゃんはそのあといつもトレーニングだってしてるだろ」
ブラッド「汚れがたまる要素ってのはゴロゴロ転がってるんだよ。寝る前に洗顔しないで寝るのは、雑巾顔に乗っけて寝るのと変わらねーぞ」
ミラ「うげ……そう聞くとなんか嫌だな」
ブラッド「皮脂や汗が毛穴に詰まって肌にストレスを与えないよう、夜は洗顔料とかを使ってしっかり洗い流すのがベストだが、風呂でそういうのを既に使って洗ってる場合は洗いすぎになってかえって肌にダメージを与える恐れもある。そういう場合は、水だけで流すだけでもいいだろう。とにもかくにも洗顔しないで寝るのは、肌にとっては非常によろしくない!」
ブラッド「水の温度は」
ミラ「32℃」
ブラッド「そうだ!」


-After a few months-

ミラ(……)
ミラ(大分ブラッドの言ってたことは習慣化してきたな)
ミラ(だが正直、何か変わったようには見えないが……)
ミラ(バックボーンをつけろということなんだろうか)
ミラ(……こんなことがバックボーンになってくれるとは、正直思えないが)
ミラ(しかしまあ、この生活になってからというもの、目覚めがよくなったり寝つきもよくなったりした)
ミラ(多少面倒だったが、慣れてしまえばどうということもない程度のことばかりだ。わざわざ止める理由はないか)
ミラ(取り敢えず……今日も仕事に―――)
ブラッド「ミーラちゃん」
白刃「お邪魔しますよー」
ミラ「?」
ブラッド「はろはろ」
白刃「おはようございますー」
ミラ「ああ、おはよう二人とも」
白刃「……わお」
ブラッド「ね?なんか違うでしょ」
白刃「なんかっていうか、雰囲気はもう全然違いますね!」
ミラ「は?なに?」
ブラッド「いやね、ミラちゃんずーっと頑張ってた甲斐もあって最近雰囲気とか見た目変わってきたなあって思って」
ブラッド「白刃ちゃんにも見てもらいたくてさ。お風呂場でしか一緒してないからわかんないかなーと思って」
白刃「キリっとした雰囲気はそのままなんですけど、なんかやわらかーくなって……大人の女性って感じですよ!」
ブラッド「自信が身についた証拠なりね」
ミラ「そ、そういうものか?自分だと全然わからないけど……」
白刃「わっ!すごい!」
ミラ「うわ!」
白刃「肌綺麗!すべすべもちもち!髪サラサラ!すっごい!唇つやつや!いいにおい!」
ミラ「うわ、ちょ、白刃さ……ひゃっ!ちょっと……!」


白刃「ごちそうさま~」
ミラ「……」
ブラッド「無残に食い散らかされたね」
ブラッド「あ、白刃ちゃんちょっとちょっと、本題を忘れないでよ」
白刃「あ、そうでした。実は今日はですね、ルーノさんがアークス1年目の記念日なんですよ」
ミラ「……ルーノが?」
白刃「はい!なので、チームの皆さんでパーティを開くんです!ちょっとおしゃれしてね」
ブラッド「で、ミラちゃんようのオシャレ衣装を用意したので」
ミラ「は?いいよ私はこのままで。上にスーツを着れば、正装としては問題ないはずだ」
ブラッド「いやいやせっかく可愛くなったんだから」
ミラ「……まあ、どういう服かによるが」
白刃「はい、これです!」
ミラ「……!?」


ミラ「……私は絶対着ないからなこんなもの」
ブラッド「別にいいよ、着替え終わるっていうまでこの部屋から出さないから」
ミラ「ふざけるな!横暴だ!」
白刃「いいじゃないですかー、きっと似合いますよ」
ミラ「バカにするのもいい加減にしろ!確かにお前たち二人のおかげで、細部は多少まともになったのかもしれんが、根本的にこんな華やかな衣装が似合うような顔じゃないだろうが私は!素材の問題だ!素材の!」
ブラッド「パーティ何時からだっけ?」
白刃「10時からですよ。そろそろ出発しないと会場に送れちゃいますね」
ブラッド「ああー、じゃあ悲しいけどミラちゃんはこのまま置いてけぼりだね」
白刃「そうですねー、置いていきましょうか」
ミラ「なああああっ!?ちょ、ちょっと待て!わかった、着るよ着るからちょっと待って!」
ミラ「くっ、くっそ……!なんで私がこんな服を……!」


ミラ「着替えたぞ!」
ブラッド「お」
白刃「では早速―――」
ミラ「あ……」
ブラッド「うほ」
ミラ「閉めろバカー!」
白刃「いや、なんで脱いでるんですか!」
ブラッド「着替えるだけ着替えた!……とか舐めたこと言うつもりじゃねえだろうな。もちろんその服でしかパーティに参加することは許さねえ」
ミラ「クソがー!!!」


ミラ「……」
白刃「ほら、似合ってるじゃないですか!」
ミラ「う、嘘だ……」
白刃「そんなことないですよ!」
ブラッド「可愛い可愛い!」
白刃「それじゃあ、行きますか!」
ブラッド「おう!」


ブラッド「おお、ここだここ!」
白刃「思ったより大きいですね」
ミラ「じょ、冗談じゃないぞ……」
ブラッド「クロス君の交友関係って意外と広いんだぜ、仲間のお祝いだーって言ったら皆集まってきたらしくてよ」
白刃「結構有名なんですね」
ブラッド「アークスの中じゃあ大ベテランなんだろうな。うらやましいぜ!」
白刃「ブラッドさんもBEEのキャリアはそのくらいのはずなんですけどね」
ブラッド「全くだ、不思議なことにいつまでたってもうだつが上がらなくてまいっちゃうぜ」
白刃「……仕事しないからでしょ」
クロス「おう、来たか二人とも」
白刃「あっ、クロスさん!」
ブラッド「スーツ似合うねえ!」
クロス「普段とほとんど変わらんがな、お前の方こそ中々じゃないか」
ブラッド「ふ、太陽系でもっともイケメンと恐れられたブラッド様を舐めてもらっちゃあ困るぜ。スーツの着こなしくらいはお茶の子さいさいよ」
クロス「アークスの仕事も、はやくお茶の子さいさいになってほしいもんだな」
ブラッド「……がんばりましゅ」
クロス「……ん?」
クロス「なんだ、その白刃の後ろの赤いの。背後霊か?」
白刃「……ミラさん」
ミラ「だ、だって……」
クロス「ミラなのか!普段と全然違うから気付かなかったぞ。そんな服持ってたんだな」
ブラッド「いや、色々あってとあるデザイナーに発注したのさ。この世に一品だけのオーダーメイドだぜ」
クロス「そりゃまたすごいな、高かったんじゃないのか、ミラ」
ミラ「え、いや……私は何もしてないんだ。この二人がこれを着ろと……」
クロス「へえ、じゃあ白刃か。ブラッドにそんな金があるわけないだろうし―――」
ブラッド「俺だよ!!失礼だな」
クロス「嘘だ!?普段仕事をしないお前が、どうしてそんな……!?」
ブラッド「ちゃーんとこの日のために貯金してたんだよ」
白刃「いや、貯金も何もそもそもお金がどこから湧いて出てきたんですか……」
ブラッド「そりゃまあ、世の中稼ぐ方法はいくらでもあるってわけよ」
白刃(怪しい)
クロス(怪しい)
ミラ(……着てて大丈夫なんだよな、これ)


クロス「ほれ、さっさとルーノに見せてやれ。中に入ったら右奥のテーブルにいるからな」
ミラ「み、見せるも何も……恥ずかしくてとても人前に出られないだろ、目立ちすぎだ、この格好は……」
クロス「心配するな、お前よりすごいのなんかゴマンといる。最近来たあの地球親善大使も顔負けのヤツもいるくらいだ」
ブラッド「マジかよ……」
白刃「私のタイトドレスじゃあ背景になっちゃうかもですね」
クロス「ともかくもう始まってるんだ、行くぞ」
ブラッド「さあゴーゴー」
ミラ「わ、ちょ!待て!まだ心の準備が……!」
ブラッド「ゴー」


白刃「……わーお」
ブラッド「でかい宴会場借りるだけのことはあるわけだ」
白刃「すごい人数ですね」
ミラ「……」
ブラッド「クロス君の人脈はすげーや、ミラちゃん目立つどころか人の波にのまれるぜこりゃ」
クロス「俺だけじゃなくて、レイも同期に声かけまくってたからな。正直集め過ぎたくらいだ」
白刃「でも、いつも貧乏貧乏言ってるのによくこんな宴会場借りるお金がありましたね」
クロス「8割レイの金だ。一応俺も主催ってことになってるが、ほぼアイツ一人の主催みたいなもんだ」
ブラッド「そんなお金がどこから出てきたんだ……」
クロス「この日のために貯金してたんだと」
ブラッド「イメージと違うなあ」
クロス「お前の方がな……」
ブラッド「まだ言うか」
白刃「……ところで、ルーノさんは?」
クロス「ほれ、あっちでレイと話してるぞ」
ミラ「そ、そうか。じゃあ後にしよう」
白刃「ダメです」
ミラ「なっ……ちょ、白刃さん?」
白刃「ここまで頑張ったのに最後の最後で引いてどうするんですか!」


ミラ「ちゃんと後で行くって……今行くのはなんか違うだろ」
白刃「最後までレイさんと一緒に話してたらどうするんですか」
ミラ「そんなことあるか?」
ブラッド「どうだろ、レイちゃんのことだからわざわざルーノ君のそばから離れるとは思えないし、十分あるんじゃない?」
ミラ「……しかしだな」
レイ「あ、お前らどこ行ってたんだよ!もう始めちまったぞ!」
ブラッド「およ」
白刃「レイさん!」
白刃「ごめんなさい、ミラさんがだだこねてて」
ミラ「だ、誰が!」
レイ「お?なんだよミラ、その服」
白刃「似合ってますよね?」
レイ「お前そんな服持ってたんだ!」
白刃「似合ってますよね?」
レイ「……」
ミラ「……」
レイ「まあ……」
ミラ「ほら見ろ!」
白刃「今の間はレイさんきっとミラさんに見惚れちゃってたんですよ」
レイ「いや、さすがにそれはな―――」
白刃「」
レイ「いや、ちょうにあってるとおもうよ」
ミラ「無言の圧力をかけるな!!」
ミラ「ったく……」
ミラ(まあいい、ルーノに見られなければ済む話だ)
白刃「あ、ルーノさん!」
ミラ「!?」
ルーノ「皆来ていたのか」
クロス「ついさっき来たところだ」
ブラッド「ありゃ、なんでルーノ君は普段と変わらない服なの」
ルーノ「いや……」
ルーノ「それより、ミラは来ていないようだな」
白刃「え?いやここに……あれ?」
レイ「向こうに走ってったぜ」
白刃「ああもう世話の焼ける!」
ルーノ「来ているのか」
白刃「来てますけど、服が恥ずかしいとかなんとかでずっとこの調子なんですよ」
ブラッド「そうそう、せっかくルーノ君のためにおしゃれしたっていうのに度胸なくてねえ」
ルーノ「そうか」
白刃「相変わらず無感動というか、リアクションに欠けるというか……」
ルーノ「……本音を言えば少し見てみたいが、無理強いするのはよくない」
白刃「見たいんですね!見たいって言いましたね今!任せてください、必ず連れてきますよ!」
ルーノ「いや、無理に連れてくる必要は……」
ブラッド「まあまあ、ここは白刃ちゃんに任せて」
ルーノ「……」


ミラ「……」
白刃「ミラさん」
ミラ「わあ!」
白刃「何逃げてるんですか!」
ミラ「いや、だって……」
白刃「こっちです」
ミラ「うわ、ちょっと待って!頼むから待ってくれ!」
白刃「なんですか!ここまで頑張ったのに!綺麗になったのに!勿体ないと思わないんですか!?」
ミラ「だ、ダメなんだよ!」
白刃「何がですか!」
ミラ「自信なんか持てないよ!!」
ミラ「……どれだけ、女性らしく生きようとしても……そうじゃなかった時間の方が圧倒的に長いんだ」
ミラ「私は死ぬまでずっとそういう生き方をするんだと思ってた!」
ミラ「あなたにはわかるもんか!どれだけ外見を繕っても、私は心の底から女性になることなんてできやしないんだよ!!」
白刃「……」
白刃「……それは初めて聞きましたね。それがミラさんの本音ですか?」
白刃「でも、何カ月も頑張ってましたよね」
ミラ「それは……あなたたちがそうしろと言ったから」
白刃「言われただけじゃ、継続なんてできませんよ」
白刃「ミラさんは鏡の前に立って……実感したはずです。小さくても、少しずつでも、変わっていく自分、それを喜んでいる自分」
白刃「ありませんでした?」
ミラ「……」
白刃「女の子の特権ですよ、それは」
ミラ「……けど」
白刃「いいじゃないですか」
白刃「きれいな女性は確かに色々と人生で有利かもしれませんけど」
白刃「きれいな女性が須らく幸せになっているとは限らないんです」
白刃「ミラさんにも幸せになる素質はあると思いますよ?」
白刃「こうして頑張ってこれたんですから」
ミラ「……白刃さん」
白刃「さ、行きましょう!」
白刃「慌てふためくルーノさんを笑ってやりましょうよ」
ミラ「……はは」
ミラ「そうだな、慌てふためかないと思うけどな……あの鈍感男は」
白刃「あー、言えてるかもです」

-おしまい-








-その後-

白刃「ということで、お待たせしました。ミラさんですよ」
ルーノ「……?」
ミラ「……あ、あー……なんだ。アークス1年間だったか?おめでとう」
ルーノ「……」
ルーノ「…………」
ルーノ「ミラ!」
ミラ「遅いわ!」
白刃「ミラさんそのかわいらしい服でその口調はなんとも……」
ミラ「うるさいな」
ルーノ「ミラ、その服はいつ買ったんだ」
ミラ「ブラッドが買ってくれたんだ、パーティの直前に渡されたんで、私もびっくりしたよ」
ルーノ「……そうだったのか」
白刃「似合いますよね?」
ミラ「一々そんなこと聞かなくていいよ……」
ルーノ「ああ、似合ってる」
ミラ「……」
白刃「!」
白刃「よかったじゃないですか!」
ミラ「……へ?あ、ああ……あ……うん」
白刃「どうしたんですか?」
ミラ「……」
白刃「……脈がない」
ルーノ「何故」
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