その顏やめなよ

レイ「長かったぜ……1週間の謹慎期間」
ミラ「……」
白刃「お疲れ様です」
レイ「てめえ! ルーノに何もしてねえだろうな! もし勝手に手出ししてたら……わかってんだろうなあ」
白刃「あら、食べさせてもらってるだけの人がそんな口を利いてもいいんですか?」
レイ「……」
ミラ「バカだなお前」
レイ「うるせえ!!」

白刃「一週間ルーノさんと一緒に過ごして分かったことがあるんですけど」
レイ「……ゴクリ」
ミラ「……」
白刃「本っっっ当に表情変わらないんですね!」
レイ「……」
ミラ「……」
レイ「……ハッ! なんだ、何言いだすかと思ったらそんなレベルで止まってんのかよ!」
レイ「ちょっとでも警戒したアタシがバカだったぜ」
白刃「じゃあレイさんはルーノさんの笑顔とか見たことありますか?」
レイ「あーるよーもちろんあるさあ」
白刃「へえー! どんな時に笑顔になるんですか?」
レイ「……そ、そりゃもうアタシと喋ってるだけで笑顔も笑顔さ! 笑いまくりよ!」
白刃「絶対嘘ですね」
レイ「嘘じゃねえよ!」
白刃「本当ですかあ?」
レイ「この前のドッキリでだって表情変えさせたじゃねえかよ!」
白刃「あんなの反応しない方が無理ですよ。 ほとんど生理現象じゃないですか」
レイ「アタシに対して怒ってたじゃん!」
白刃「……そんなんでいいんですか?」
レイ「怒りっていう感情には変わりねえ! アタシはルーノの感情を引き出すことが出来るレベルにいるんだよ! お前らと違ってな!」
白刃「……はあ。 ミラさんはどうです?」
ミラ「私はまだあまりルーノとは上手く話せてないから、白刃さんよりも今は下だと思う……」
白刃「表情変わらずと」
ミラ「それどころか普通の会話すらぎくしゃくしてるよ」
レイ「よし、コイツは論外だな」
白刃「本当にルーノさんのこと好きなんですか?」
ミラ「……」
白刃「……あのですね、ちょっと真面目な話なんですけど」
レイ「あん?」
ミラ「……?」
白刃「私、ルーノさんはあのままじゃダメだと思うんです」
白刃「私は過去のことで色々と悩んでてあんな感じでずっと塞ぎ込んでるってなんとなくの事情しか知らないんですけど……レイさんは何か詳しく知ってます?」
レイ「まあ大体そんな感じの認識であってるよ。 ガラテアにクローンとして使われてた時に、たくさんの星や人々を襲った時のことをずーっと考えてるんだ。 ミラの故郷の惑星アニマも襲われた星の一つだよ」
白刃「……全部知ってる内容でした」
レイ「なんなんだよてめえは!」
白刃「ミラさんのことを過剰に気遣うのも、きっとその一環なんでしょうね」
ミラ「よくルーノは”償いだ”って言ってるよ……受ける方の身にもなってもらいたいがな」
白刃「というと?」
ミラ「私がアイツを苦しめているようなものだ」
レイ「実際最初に会った時は追い詰めまくってたしな。 アタシは忘れてねえぜ」
ミラ「……だから私もそれを償うために、ルーノに何度ももう気にしてないとか忘れようとは言ってるんだ。 実際本心からそう思う」
ミラ「両親や同胞が殺されたことを忘れていいというわけじゃない……ただ、報いを受けるべきは元凶のガラテアなんだ」
レイ「……そう考えれば、ルーノの心はガラテアを討つまでは解放されることはねえのかもな」
白刃「そうは思いません。 私はちょっと頑張ってみます」
レイ「何が?」
白刃「ルーノさんを笑顔にしてみせます」
レイ「そんなんくすぐりゃ一発よ」
白刃「そういう生理現象とか一時の笑いじゃなくて!」
白刃「自然な笑顔にさせてあげたいです」
レイ「……無理だと思うぜ」
白刃「自分の好きな人が落ち込んでたら、励ましてあげなきゃ」
レイ「……」
ミラ「……」
白刃「女の子のお仕事ですよ」
レイ「……いや、ちょっと待って……お前、どういうこと?」
白刃「何がですか?」
レイ「いや、好きな人って……マジ? マジでお前……?」
白刃「あ……あ……」
白刃「あ、あくまで仲間としてですよ!」
レイ「……」
ミラ「……」
白刃「……そ、それはともかく」
レイ「あーはぐらかしやがったな! てんめえ処す!! 処す!! うりゃてりゃそりゃ」
白刃「何するんですかこの鬼! クワガタムシ!」
レイ「ぶっ〇す!!!」
ミラ「やーめーろーこんな狭い部屋でー!! 誰の部屋だと思ってんだ!!」
白刃「ともかくですよ! やはり一人の仲間が苦しんでいるのをそのまま放っておくのはいかがなものかと!」
白刃「特にレイさんとミラさんはルーノさんのことが好きなんでしょう? それなのに好きな男性が困っているのを放っておくのは女性の風上にも置けませんよ! いいんですかそれで!」
白刃「それでいいと思ってるのならルーノさんがかわいそうなので、私がルーノさんを」
レイ「うるせーうるせーうるせー!! アタシにだってそんくらい出来るわこんボキャー!!! 部外者が横からしゃしゃり出てんじゃねーぞスッダコがあー!!」
白刃「なんですかそれ!! いつからルーノさんはレイさんのものになったんですか! 告白したこともないくせに偉そうなこと言わないでくださいよ!」
レイ「うるせー! したけどいつもの調子でよくわかんねえっつっておしまいだよ!!」
ミラ「余計惨めだ……」
レイ「てめーは黙ってろ!!」

白刃「そこまで言うのなら、もう白黒つけましょうか」
レイ「ああ?」
白刃「この中で誰がルーノさんを楽しませることが出来るか……勝負です」
白刃「そうすれば誰がルーノさんに相応しいか、また一つわかるってものでしょう」
レイ「けっ、誰がそんなもんやるかよ」
白刃「あれ? 自信ないんですか?」
レイ「やってやろうじゃねえか!!!」
ミラ(落ちるのはや……)
白刃「ミラさんも当然やりますよね」
ミラ「……ああ、まあ」
白刃「なんですかその生返事」
ミラ「いや……大丈夫だ」



白刃(さてと……どう仕掛けていけばいいか)
白刃(美味しい料理とかたくさん作ればいいかなとか思ってたけど、言い出しっぺの手前、私が適当なことをするわけにもいかないし、それってきっとコンセプトから外れた笑顔だろうし)
白刃(なんにしてもまずは会話しないと始まらない……)
レイ(ミラは話にならねえからアウトオブ眼中として、白刃はどうかな……普段あまり関わってないとはいえ、女としてのレベルは正直かなり高いからな……認めたくねーけど)
レイ(先手必勝と行きたいとこだけど、どうしたもんか……正直ルーノを笑わせるってだけなら楽勝なんだけどな)
レイ(アイツの心の中なんて……)
クロス「……」
クロス「なんか変な空気が流れてないか?」
白刃「そんなことないですよ」
ルーノ「……」
ブラッド「さーて今日も朝飯食って元気にゲ」
クロス「ゲーーーーームじゃなくて仕事を頑張れよ?」
ブラッド「ふぁい」
ルーノ「いただきます」
レイ「……」
クロス「そういえばミラはどうした?」
白刃「さあ?」
ブラッド「また外でも走ってるんじゃなあい?」
クロス「部屋にいないのか?」
ルーノ「見てくる」

ルーノ「ミラ、いるのか?」
ミラ「え? ルーノ……!?」
ルーノ「飯が出来てるぞ」
ミラ「わ、わかった、すぐ行く」

ルーノ「部屋にいた」
ブラッド「何してたの?」
ルーノ「中には入っていないからわからない」
ブラッド「入っちゃえばよかったのにー。 着替え中だったかもよ?」
クロス「お前じゃないんだからやらないだろ」
ブラッド「語弊があるよその言い方、俺が女の子の着替えを覗くみたいな言い方やめてくれるかな?」
クロス「語弊も何も事実だろうが」
白刃「そういえばルーノさん、今日はお仕事は一人ですか?」
ルーノ「ん」
レイ「いや、アタシと一緒に行くよ」
ルーノ「そうなのか?」
レイ「バカ!」
白刃「レイさん……」
クロス「息を吐くように嘘つくわ、音速でボロが出るわ……」
レイ「うるせー!」
ルーノ「……今日は休む予定だ」
レイ「え? そうなの?」
クロス「ルーノは働き過ぎだ。 一人でどれだけ稼いでると思ってるんだ」
レイ「そんなに?」
クロス「なまじ探索許可が出されてるエリアが一番多いからその分働いてくるんだよ。 お前も少しは見習えってんだ!」
レイ「うあいだ!」
白刃「そっか……ルーノさん休みなんですね」
ルーノ「手伝うくらいなら」
クロス「ダメだ」
レイ「あ、じゃあアタシも休むー!」
クロス「お前は死ぬまで働いてこい」
レイ「なんで……」
クロス「今月遊びに金使い過ぎなくせに大して仕事してないからお前のところで大赤字なんだぞ!」
白刃「散々ドッキリやってましたもんね……」
レイ「ううう……」
クロス「……まあ、白刃は少し休んでもいいかもしれんがな。 家事と仕事の両立じゃかなり忙しいだろうからロクに休めてないだろう」
白刃「ははーお気遣いありがとうございます……兄さんからは絶対に聞けない言葉ですよ」
クロス「で、どうする?」
白刃「言うほど大変じゃないですし、夜はしっかり眠れてるので大丈夫ですよ! 今日も頑張ります!」
クロス「全く大したヤツだな」
レイ「……」
クロス「てめーも少しは見習えってんだ!」
レイ「うあいで二度もぶった!!」

ミラ(寝ぐせが中々直らなかった……)
白刃「あ、ミラさん。 おはようございます。 ご飯テーブルの上にありますから」
ミラ「ああ、ありがとう」
ミラ「……?」
ルーノ「……」
ミラ「……ルーノ、仕事は?」
ルーノ「ん、今日は休みなんだ。 働き過ぎらしい」
ミラ「そうなのか」
ルーノ「ミラは休まないのか?」
ミラ「休めるほど働いてないと思う」
クロス「いや、お前もそろそろ休んどかないとダメだぞ。 今週くらいはまだいいが、来週あたりに休み予定しとけよ」
ミラ「あ、ああ……」
ルーノ「うちのチームはレイとブラッド以外は結構働いてるみたいだな」
クロス「まあな。 おかげで大分余裕をもって生活できてるよ」
クロス「それじゃあ、留守は頼むぞ」
ルーノ「ああ」
ミラ「……」
ルーノ「……」
ミラ(ルーノの休日……か)
ミラ(どんな風に過ごすんだろうな……確かにルーノは毎日仕事に出てて、戦っている時と飯を食べてる時以外の姿をほとんど見たことがない)
ミラ(……)

ミラ「……あ、もしもし」
クロス「おう、どうした?」
ミラ「……その、急で申し訳ないんだけど、今日休んでもいいか?」
クロス「ああ、大丈夫だ。 どうせ十分働いてるんだからゆっくり休め」
ミラ「ありがとう、すまない」
クロス「そんじゃ」

ミラ「……何してるんだ?」
ルーノ「……ん」
ルーノ「特に何もしていない……何をすればいいのかわからないからぼーっとしていた」
ミラ「……そうか」
ルーノ「ミラも休みなのか?」
ミラ「あ、ああ……まあ、ちょっとな」
ルーノ「そうか」
ミラ「……」
ルーノ「……」
ミラ「……一日ずっとこうしてるのか?」
ルーノ「……わからない」
ルーノ「ただ、こうやってボーっとしているのも貴重な時間だと思っている」
ルーノ「俺がなぜ生まれたのか、なぜ生き続けることが出来るのか、これからどう生きていくべきなのか……その他にも色々、大切なことをゆっくりと考えられる」
ミラ「……どう生きていくべきかって……償いのことか?」
ルーノ「そんなところだ」
ミラ「……」
ルーノ「……」
ミラ「……あの時は本当にすまなかったと……思ってる」
ルーノ「何度目だろうな、このことでミラが謝るのは……ミラのせいじゃない」
ミラ「……」
ルーノ「記憶があろうとなかろうと、ガラテアに使われてのことだろうと、人を殺した罪とは向き合う必要がある」
ルーノ「それ自体は正しいことだ」
ミラ「……」
ルーノ「だから考えるんだ……どう生きていけばいいか」
ミラ「……も、もっと別の楽しいこと考えないか? 何度も言ってるけどもう私は気にしてないんだし、何よりせっかくの休みなんだから……!」
ルーノ「……楽しいことか」
ミラ「そ、そうそう!」
ルーノ「何をする?」
ミラ「……な、なんか……えーと……」
ルーノ「……」
ミラ「……」
ルーノ「……」
ミラ「……」
ルーノ「ミラ、疲れてるんじゃないのか?」
ミラ「い、いや、その」
ルーノ「俺は少し外を歩いてくる。 ミラも今日はゆっくり休んだ方がいい」
ミラ「あ……う」

ミラ(……ダメだ……私なんかじゃ到底無理だ……)
ミラ(ルーノが私に対して償おうと気を遣ってくるんじゃ……堅苦しくて笑わせるどころの話じゃないよな……)
ミラ(……私はそもそもここに居るべきじゃないのか……? ただルーノを追い詰めるだけで……)
ミラ(……)


ブラッド「いやー、俺もレイちゃんのドッキリ受けてみたかったなあ」
クロス「マジで言ってるのかお前」
白刃「ロクなもんじゃないですよ。 私なんて虫食べさせられましたからね」
ブラッド「え゛!? あの白刃ちゃんが虫食ったの!?」
白刃「タランチュラ食べましたよ」
ブラッド「マジで言ってんの……規格外にもほどがあるだろが」
クロス「全くイタズラ大好きなんて年ごろでもあるまいし、もう少し落ち着いてほしいもんだがな」
ブラッド「白刃ちゃんとレイちゃん足して2で割ればちょうどいいんじゃない?」
白刃「普通に嫌なんですけど……」
白刃(……それにしても、ミラさん休みかあ。 ルーノさんと二人きりってことは、案外これで決まっちゃうかもしれないですね)
白刃「……私の出る幕なしかあ」
ブラッド「何が?」
クロス「出る幕ならあるぞ。 ほれ、敵だ」
白刃「……」


レイ「あー疲れた……っと! ルーノォー!」
レイ「……ありゃ? いない」
レイ「……! ははーん、わかったぜルーノ……そこで寝てるなあ!!」
ミラ「……」
レイ「……」
ミラ「……」
レイ「てめえかよ!」
ミラ「うがっ……!」
レイ「なんでてめえ家にいるんだよ! 仕事はどうした仕事はぁ!」
ミラ「……」
ミラ「……すひぃ」
レイ「寝ぼけてんじゃねえ!!」
ミラ「んがっ……」
ミラ「……ああ、なんだレイか……」
レイ「お前なあ……卑怯じゃねーか? ルーノと二人きりになるために休み取るなんてよ」
レイ「けど、この様子じゃどうやら失敗して逃げられたみてーだな」
レイ「やっぱお前なんかじゃルーノとは釣り合わねーよ。 ここはアタシに任せときな……」
ミラ「……そうだな」
レイ「へ?」
ミラ「……」
レイ「……何があったんだアイツ? もしかしてマジのマジでフラれたとか?」
レイ「……」
レイ「まあ知ったこっちゃねえか……それよりもルーノ探そう」

ルーノ「……」
ネア「ちょっと、ジャスティどこ行くのよ! 待ってってば!」
ジャスティ「ルーノさ~~~ん!」
ルーノ「……ん?」
ジャスティ「お久しぶりです! 覚えてますか? 俺のこと」
ルーノ「ジャスティにネアか」
ジャスティ「うおおおおおおお! 感動っす!」
ネア「ちょ、ちょっと大声出さないでよ……!」
ルーノ「そういえば、卒業試験の方はどうなった?」
ジャスティ「そ、そこまで覚えててくれてるなんて……俺は……か、感激っす……!!」
ネア「……え、えーと、取り敢えずあの試験は中止になってしまったので、再試験を受けて、二人とも無事合格できました」
ルーノ「そうか、おめでとう」
ジャスティ「あざあっす!! これもひとえにルーノさんの活躍あってこそ!」
ルーノ「俺は何もしてないぞ」
ジャスティ「いえいえ、ルーノさんという目標あってこそ頑張れたというものっすから!」
ジャスティ「ところで、ルーノさん今お時間は大丈夫ですか? もしよかったら俺達と一緒に任務とか~……」
ネア「バカ、ルーノさんにはルーノさんの仕事があるでしょ」
ルーノ「今日は休みを取ってるんだ。 リーダーから休むよう指示された」
ジャスティ「あ、そすか……」
ネア「ほら、もう行くよ」
ルーノ「また機会があったらよろしく頼む」
ジャスティ「お、おっす! 光栄っす! 感激っす! 俺なんかでよければたとえ火山洞窟のマグマの中だろうとお供します!!」
ネア「全く……すみませんルーノさん。 お時間取らせてしまって」
ルーノ「いや、大丈夫だ」
ネア「それでは」
ジャスティ「だっ、ちょっと待てよネア! ルーノさん、また!」
ルーノ「……」
レイ「お、いたいた!」
ルーノ「?」
レイ「探したぜ、ルーノ」
ルーノ「レイ? 仕事は?」
レイ「終わった! 飯食いに行こうぜ!」
ルーノ「終わったって……また午前だけ。 クロスに怒られるぞ」
レイ「あんな変ちくりんのグラサンなんざ怖くねーよ。 それより早くいこーぜ」

レイ「どう? 多分休み取るのなんて初めてっしょ。 一人だとどう過ごしていいかわかんないんじゃない?」
ルーノ「確かに少し暇というか、手持無沙汰というか。 ボーっとするだけだな」
レイ「まあお前いっつもそんな感じだしなあ」
レイ「今までで面白い! とか楽しい! って思ったことってある?」
レイ「表情が変化しないから全然わかんねーんだよな」
ルーノ「……」
ルーノ「…………」
ルーノ「飯を食べてる時が一番楽しいかもしれないな」
レイ「そういうのじゃなくて、なんかこう遊びとか……ああ、お前あんまり遊んだことねーのな。 仕事詰めだったから」
ルーノ「……遊ぶ、か」
レイ「なんだよ」
ルーノ「あまりそういう気分になれない」
レイ「じゃあ休日どうするつもりだったんだよ」
ルーノ「これからのことについてゆっくり考えるつもりだった」
レイ「何、これからのことって」
ルーノ「……俺が過去に」
レイ「はいストーップ! ダメダメダメそんなのつまんない!」
ルーノ「……」
レイ「お前いっつもそんな小難しいことばっかり考えてるから、表情も険しくなるんだよ」
レイ「もっと楽しもうぜ。 人生一回きりしかないんだからさ。 もっと自分のために時間を使えよ」
ルーノ「人を殺した人間にもそんな権利があるのか……?」
レイ「お前なあ……」
ルーノ「俺は真面目に聞いているんだ」
レイ「……」
ルーノ「俺は俺のために時間を使っている。 俺は楽しい生き方よりも正しい生き方をしたいだけだ」
ルーノ「そういう人間として生きたいんだ」
レイ「バッカヤロお前……なーにが正しい生き方だよ。 そんなもん誰にもわかんねえんだよ。 何が正しくて何が正しくないかなんて……」
ルーノ「だからゆっくり考えたい」
レイ「んなことに使う時間が無駄だっつってんだよー。 わっかんねえかな」
レイ「自分追い詰めることに時間使ってどうすんのっつってんの!」
レイ「ルーノ、お前幸せになりたくねーのかよ」
ルーノ「レイに俺の幸せが何かわかるのか?」
レイ「……」
ルーノ「……すまない、少し一人にしてほしい」
レイ「ちょ、ちょっと待ってよ!」
レイ「そんな怒らなくてもいいだろ……たださあ、アタシはルーノに苦しんでほしくなくて……お前の悩む気持ちもわかるけどさ、過ぎちゃったもんは変えられないじゃんかよ! それをいつまでも気にしてたって……」
ルーノ「……」
レイ「……ルーノ」


白刃「ルーノさーん! ご飯ですよー!」
クロス「どうした? ルーノいないのか?」
白刃「さあ……部屋で寝てるんですかね?」
クロス「夜飯時に来ないなんて珍しいな」
白刃「ちょっと部屋見てきますね」
クロス「……しょうがない、先に食うか」
ブラッド「どうでもいいけどこの子達はどうしちゃったの?」
レイ「……」
ミラ「……」
クロス「ゾンビみたいなツラしてるな」
白刃「クロスさん、ルーノさんの部屋の机の上に紙が……」
クロス「紙? ……明日の朝帰る」
ブラッド「あ、朝帰りだとお!?」
クロス「……お前ら、何か知ってそうだがどうなんだ?」
レイ「……はあ」
ミラ「……」
クロス「……ちっ、使い物にならんなこりゃ」
白刃「……私の方から後で聞いておきます」
白刃(……まさかとは思うけど)


白刃「一体何があったんですか? 恐らくルーノさんと話して何か失敗したんでしょうけど……」
レイ「……怒らせた」
白刃「ええ?」
レイ「ちょっと飯食べながら話してたんだけどさ……なんかうまくかみ合わなくて……」
白刃「あのルーノさんが怒るって相当ですよ……一体何言ったんですか」
白刃「……ミラさんは?」
ミラ「……」
白刃「……こっちはもっと重症みたいですね」
レイ「どうせお前も怒らせたんだろ?」
ミラ「……怒らないよ、ルーノは」
ミラ「私に対してそんなことはしない。 私はそういう対象じゃない」
白刃「……?」
ミラ「今日一日ずっと考えてたんだ……チームを抜けようかどうか」
レイ「はあ?」
白刃「ちょっとどうしたんですか……?」
ミラ「ここにいるだけで、ルーノにずっと気を遣わせてるから……」
レイ「……ああ、そりゃまあそうだろうよ」
レイ「けどそりゃお前が悪いっつーよりアイツが考えすぎなんだよな」
レイ「いつまで経っても記憶にもなかった頃のこと引きずってさ……バカみてー」
ミラ「……レイが怒られたのもその話でなのか?」
レイ「まあな。 もっと楽しく生きりゃあいいのにって話をしてたんだけど……はああ……」
白刃「……冗談みたいな感じでルーノさんを笑わせたら勝ちなんて勝負始めましたけど、相当難しいみたいですね」
ミラ「というより、私のような”被害者”がいなくならない限りは……無理だろう。 あいつはずっと抱え込む」
レイ「そんなの無理だろ。 たとえお前が目の前からいなくなろうと、お前以外にもそういうヤツはいくらでもいるんだ」
白刃「まあそうですよね……ミラさんが無理に抜ける必要はないと思います」
ミラ「……」
白刃「そんなに気になるなら、ルーノさんからの意識を変える必要がありますね」
ミラ「……?」
白刃「自分は被害者なんかじゃないって積極的にルーノさんにぶつかっていって、一人の大切な女性としてみてもらえればいいんですよ」
レイ「それが出来りゃあ苦労しねーよ」
白刃「まあそうですよね。 でもあれも無理これも無理じゃ始まらないし……難しい分、チームを抜けるっていう選択よりはずっと明るい未来があると思います」
レイ「……おい、ちょっと待てよ。 アタシはまだ諦めてねーぞ。 なんでコイツが結ばれることになってんだよ」
白刃「いやあ、それはまだわかりませんよ。 レイさんかもしれないし、ミラさんかもしれないし……他の誰かかもしれないし」
白刃「とにかくルーノさんの表情を変えるには、ルーノさんからの見られ方が重要ってことですよ。 ミラさんはその点で一歩劣ってると言わざるを得ないから、大変に感じるっていうことです」
ミラ「……そうか」
白刃「だから元気出してくださいよ。 こんなムードじゃゲームどころじゃないですよ」
白刃「乙女はくじけずチャレンジあるのみです! ということで明日は私の番ですからね」
レイ「……はっ、抜け駆けなんざさせるかよ。 明日もアタシからガンガン突っかかってやる」
白刃「いやどっちかっていうと抜け駆けしたのレイさんですよね? 今日も仕事午前だけで終わって……」
レイ「うるせー! それでも収穫なかったどころか赤字だ赤字!」
レイ「大体一番の抜け駆けはコイツだろ! いきなり休みなんて取りやがって!」
白刃「まあミラさんはレイさんと違って毎日コツコツ働いてますし……」
レイ「ちっ!」




ルーノ(……)
ルーノ(…………)
ルーノ(………………)
ルーノ「はあああああ~……」
ルーノ「……生きている」
ルーノ(風が身体の中を廻るということは、生きているということだ)
ルーノ「……!」
ルーノ「……草が光ってる。 こんなものがあるのか」

ルーノ(虫の音色もいい)
ルーノ(水の音も)
ルーノ(生きているって素晴らしいことだ)
ルーノ(星空にも包まれる)
ルーノ(きっと素晴らしい朝日も見ることが出来る)
ルーノ(レイ、俺はこれ以上幸せになることが出来るのか?)
ルーノ(俺は今とても幸せだし、このまま死ぬときはもっと幸せだ)
ルーノ「このまま息を止めて」
ルーノ(空まで飛んで)
ルーノ「そこで弾ける……」
ルーノ「……うん、いい」
ルーノ(でもまだ1年しかこの世界を見てないし)
ルーノ(もっと幸せなことが、この世界にはあるのかもな)
ルーノ(そんな幸せを探す生き方をしていいと、言ってくれたんだ……)
ルーノ「……本当にいいのか?」
ルーノ「……わからんな」
ルーノ(そこが一番難しいな)
ルーノ(過去は変えられない)
ルーノ(うーん)
ルーノ(よくわからない)
ルーノ(レイの気持ちが少しわかった。 難しいことは段々考えたくなくなる)
ルーノ(代わりに幸せで楽しい時間を味わいたくなる)
ルーノ(…………)
ルーノ(……)


ルーノ(……!)
ルーノ(……いつのまにか寝てた)
ルーノ(そろそろ朝日が……)
ルーノ「急ごう」

ルーノ(この場所ならよく見えそうだ)
ルーノ(……!)
ルーノ(…………眩しい)
ルーノ「……」
ルーノ(……幸せだ)
ルーノ(人は幸せになると泣くのか……)
ルーノ(……)
ルーノ「……ああ、こういうことか」
ルーノ(今、過去のことを全然考えてなかった……)
ルーノ(だから楽しく生きた方がいいってことか)
ルーノ(だが……)
ルーノ(……ああ、ダメだ……頭がぐちゃぐちゃになる)
ルーノ「……?」
ルーノ「……あれは……ミラ?」


ミラ「……ここになら居ると思ったんだが」
ルーノ「ミラ?」
ミラ「おわっ!」
ミラ「ルーノ……! やっぱりここにいたのか」
ルーノ「どうしたんだ? こんなところで」
ミラ「……いや、心配になって……つい」
ミラ「……す、すまない。 一人でいたかったのかもしれないけど、昨日のこと謝ろうと思って」
ルーノ「?」
ミラ「……お前が真剣に考えてるのに、楽しいこととか適当なこと言って」
ルーノ「ああ、大丈夫だ。 気にしていない」
ルーノ「それよりも」
ミラ「?」
ルーノ「俺が楽しく生きたらどう思う?」
ミラ「……え?」
ルーノ「幸せになっていいと思うか?」
ミラ「……生き方についてってことか? お前が考えてるって言ってた」
ルーノ「そう、ここで考えてた。 考えてたはずなんだが……」
ルーノ「静かな夜に、草木や水や星に囲まれて幸せな気分になっているうちに……過去のことは何も考えなくなっていった」
ルーノ「それはよくないことなんじゃないかと思いながらも、朝日を見る頃には目の前の幸せをただ感じていた」
ミラ「……」
ルーノ「それでいいのか?」
ミラ「……私は良いと思うよ」
ミラ「お前は罪を償おうと頑張って生きているんだから、幸せになる権利は絶対にあると思う」
ルーノ「そうか」
ルーノ「……気が楽になった。 ありがとう」
ミラ「いいのか? 自分で考えたかったんじゃ……」
ルーノ「考えてたんだが、俺一人で考えても全く答えは出なかった」
ミラ「なるほどな」
ミラ「……生き方なんてそこまで深く考えたこともないな」
ルーノ「そうなのか?」
ミラ「行き当たりばったりさ……だからお前ともあんな出会い方しかできなかった」
ミラ「出来ることならやり直したいよ」
ルーノ「俺だってそうだ」
ミラ「きっと私たち以外の人間も思ってるだろうな、あの時ああしておけばよかったなんて」
ミラ「でも過去は変えられない。 だから前向きに、幸せに、正しく、今を生きようとするんだろうな」
ルーノ「……」
ミラ「……」
ルーノ「……ふふ、はははは」
ミラ「?」
ルーノ「楽しいな、こうやって好きな人と話すのも」
ミラ「……」
ルーノ「そうだな、レイやミラの言う通りだ。 過去は変えられないからこそ償いながら生きてるんだ、俺は何も間違ってなかった」
ルーノ「だからそれはそのままに、もっと生き方を変えよう。 こんな暗い考え方ばかりしていたら周りまで暗くしてしまう」
ルーノ「楽しいこと、もっと考えてみるか」
ミラ「……あ、ああ」
ルーノ「さて、そろそろ帰るか」
ミラ「……」
ミラ「…………」






白刃「へえー、じゃあ森林エリアで一日過ごしたんですね」
白刃「よかったじゃないですか、きっとルーノさんの”好き”っていうのは仲間としてなんでしょうけど」
ミラ「何はともあれ、嫌われてなくてよかった……本当にあの場で泣き崩れるかと思った……」
白刃「で、私はそんなのろけ話を聞かされるために昼休みを潰されたわけですか」
ミラ「……」
白刃「……」
ミラ「……ご、ごめん」
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