始動

クロス『では、ルーノは人間ではないと……?』
ガラテア『どうやらそのようだね。 まだ詳しい結果は出ていないが、この男が持っているあの強大な爆発を起こすエネルギーは我々が持っているモノとは根本的に性質が違うものだ』
レイ『じゃあ、コイツは一体なんなんだよ……?』
ガラテア『……人の形をした新種のモンスターか、あるいは新たな人類の形か……いずれにせよ、今結論を出すのは急ぎすぎという他はないだろう』
クロス『……』
ガラテア『詳しい調査で新しいことが分かり次第、また連絡させてもらうよ』
クロス『すみません、よろしく頼みます』
レイ『……』
ガラテア『では、また』


ガラテア『……新たな人類の形……フフフ、既に答えは言っているんだがね』

ガラテア「……これで13体目だったのだがな」
ガラテア「上手くはいかないものだな」
ヴェネーノ「……」
アルジェント「……」
ガラテア「十分な戦力は整えられたと思うかね?」
アルジェント「計画の進行には問題ないかと」
ガラテア「君の意見も聞きたいところだね、ウィズダム」
ウィズダム「俺は反対ですよ、ガラテア様。 アナタが生み出した問題児、ファーストをどうにかできる戦力がそろったとは思えない」
ガラテア「ファーストはこちらの陣営に引き込む。 計画の第一段階はそこからだ」
ウィズダム「……引き込む算段はあるんですか?」
ガラテア「ヤツは今人間だ。 付け入るスキはいくらでもある……周りに群がる小蠅の1匹2匹でも攫ってやればいいだろう」
ヴェネーノ「力ずくで連れ去ることも可能かと」
ガラテア「それは無理だ。 あれは私の最高傑作だ……ウィズダムの言う通り、戦力としてはまだ君たちがいくら束になろうとファーストには及ばんよ」
ガラテア「それにアルジェントにヴェネーノ、君たちには別にやってもらいたい仕事がある」
アルジェント「……なんでしょう」
ガラテア「……ファーストよりも引き込みやすいヤツの居場所を特定した。 エスタジだ」
ウィズダム「アイツを引き戻すんですか? 無理だと思いますよ」
ウィズダム「ヤツはガラテア様の計画そのものに反対してここを離れたんです。 とてもじゃないですが、こちらにつくとは思えませんよ」
ガラテア「獲物を用意してやれば食いつくはずだ。 一時的にでもこちらの戦力になればそれでいい」
ガラテア「既に居場所はトレアドールが握っている。 彼女の指示通りに動き、エスタジをこちらへ連れ戻せ」
アルジェント「……承知いたしました」
ヴェネーノ「……」
ガラテア「……」
ウィズダム「……戻ればいいですがね」
ガラテア「フフ、戻るさ。 とっておきの餌があるのだから……」
ウィズダム「……ファーストですか」
ガラテア「6番目と12番目、そして13番目のクローンは想定外だった……だがその想定外の力さえあれば、ファーストを捕らえることは出来る」
ガラテア「ファーストをこちらに引き込みさえできれば、全てが終わる」
ガラテア「その時には君にも活躍してもらおう、ウィズダム」
ウィズダム「……」


- 旧市街地エリア -

既に人の住んでいない、寂れたビル街。
しかし、多くのモンスターとそれと交戦する者たちが集結しており、あたりは轟音に包まれていた。

ミラ、クロス、レイ、ルーノはこの旧市街地でモンスターの鎮圧任務を受けたが、想定外の敵の量に苦戦を強いられていた。

「うわあっ……!?」
「邪魔だ、どけ!」

そんな中、仲間の隊員の一人が襲われそうになるが、ミラが素早く蹴り飛ばしたことで難を逃れた。
一旦距離を取るように後ろに飛び下がると、クロスと背中合わせになった。
どうやら、背後は背後でクロス一人でギリギリ押しとどめているような状態のようだった。

「ったく、敵の数は多いのに味方は使えんヤツばかりで押される一方だな……!」
「どうする、一旦引くか!?」
「いや、ルーノ達の方の処理が終わればこっちに増援で来るはずだ。 それまで持たす!」
「よし……ッ!?」
「!」

二人が改めて構えたその瞬間、目の前の怪物たちを赤い爆炎が包み、一網打尽に蹴散らした。

「爆発……ルーノか!」
「随分早かったな……ん?」

二人の視線の先には、オートマチック型の二丁拳銃を構えた男が立っていた。
赤い髪が爆風に揺れ、炎が顔を照らすと、どこか狂気を秘めたような鋭い目つきがあらわになる。
男はゆっくりとクロスとミラに歩み寄った。

「……ルーノではないみたいだが、なんにせよ助かったな」
「ああ、しかしすごかった……」

クロスとミラも彼にゆっくりと歩み寄ろうとしたその瞬間、男はクロスに向けて発砲した。

「ッ!?」

発射された弾丸を紙一重で躱すクロスと、瞬時に構えるミラ。
男はその様子を見て、口をゆらりと開き邪悪な笑みを浮かべた。

「ッッッTOoooooooooooooooooo!!!」

耳をつんざくような男の叫び声に、思わず二人は耳をふさぐ。
男はそんな二人など気にも留めない様子で話しかけ始める。

「よ~~~うやく面白そうな相手に出会えたぜ!」
「……な、なんなんだお前は!」
「なんだかよくわからんが味方じゃなさそうだな……!」
「道端のクソばっか相手にしててもつまらねえったりゃありゃしねえ~! せっかくせっかく人間様に出会えたッんだ、盛り上がっていこうぜエ!」

男は左手の拳銃をホルスターに収め、その掌に赤く輝く球体を生み出し、二人に向かって投げつけた。

「こ、これは……!?」

動揺するクロスの前にミラは素早く躍り出、迫りくる球体を空高く蹴り飛ばした。
球体は天空で爆炎と轟音を放ちながら大爆発を起こし、消えていった。

「この感覚……ルーノのものと同じ、それにさっきの物言い……! 貴様、ガラテアのクローンだな!」
「なんだと……!? 本当なのか、ミラ!」
「ああ、ほぼ間違いない……さっき触れて分かったが、あれはCエネルギーの塊だった」
「ご名答だがそれがどうしたァ!? 俺から出せる景品はてめえらの地獄ツアー招待券だけだってのよオ~! ヒャハハハハハハハハハハハ!」

男は素早く二丁拳銃を構え、クロスとミラにそれぞれ照準を合わせて連射し始めた。
二人はお互い左右に分かれ、走って弾丸を躱しながら男に詰め寄る。
そしてほぼ同時に、ミラは飛び蹴り、クロスは手に持った長槍で切りかかる。

(捉えた!)
「HAッHA~ッ!!!」
「ぐっ……!?」

男は二人の攻撃を銃身で受け、そのまま腕力で跳ね返す。

「いいねえ~、楽しいねえ~!」
「この……ぬあああッ!!」

クロスはすぐさま槍を構え直して突進し、素早く斬撃を繰り出した。

「……!?」
「クヒヒヒヒ!」

斬撃は男の肩を切り裂き、鮮血が勢いよく吹き出したが、男は気に留める様子もなく邪悪な笑みを浮かべたまま再びクロスを振り払う。
その背後からすぐさまミラが襲い掛かり裏拳を繰り出すも、男は跳躍しつつ銃撃をミラへ見舞う。

(硬気功ならこの程度……!)

ミラは硬化させた素手で襲い来る弾丸をすべていなし、空中へ飛んだ男に追撃を仕掛ける。
宙に浮く男の鳩尾に正拳が叩き込まれたが、男は笑いながら身を翻し、そのまま着地する。

「やるねえ~! もっとこいよお、カワイ子ちゃん!」
「クロス!」
「応ッ!!」

クロスは男の背後から着地際を狙って勢いよく突きを繰り出し、咄嗟に振り向いた男の右胸部へと突き刺さった。

(心臓、捉えた!)
「ッハハハ!!」
「っ!」

が、男はまた動じることなく槍を振り払い、銃弾をクロスの肩へ撃ち込み後退させる。

「うおおッ!」
「!」

直後、頭上からミラが襲い掛かる。

「イヤァハアアアア!!!」
「!!」

男は振り向きざまに回し蹴りを放つと同時に爆風を起こし、ガードの上からミラを吹き飛ばした。
クロスとミラは再び男と正面から向き合う形に戻される。

(どうなってる……! 確かに心臓を捉えたはず……)
「ンン~、いいねえ、やっぱいいねえ。 怪物なんぞ相手にするより100倍いいねえ~。 ソウルってもんを感じるぜエ」
「……目的はなんだ、ルーノか!」
「おいおい、勘違いすんなよ。 俺ァ確かにガラテア・メルフォーゼに造られたクローンの一人だぜ。 だが、俺にとっちゃヤツの計画なんざど~~~だっていいんだよ。 つまらねえからな」
「なんだと……!」
「人生は一度きりしかねえんだぜ~!? 楽しいことだけ考えて生きていくのがいいに決まってんだろォがッ! 俺は人じゃァねえけどなあ~、フヒャハハハハハ!!」

男は狂ったように笑いながら、再び二丁拳銃を乱射する。
最早照準などつけておらず、その場でクルクルと回って弾をまき散らしているだけの状態だったが、銃弾はすべてミラとクロスに向かっていった。
クロスとミラは再び別方向に分かれながら銃弾を回避する。

「これは……!?」
「気を付けろクロス! コイツが銃から発射してるのはただの弾丸じゃない! Cエネルギー弾だ!」
「誘導させるのも簡単ってわけか……!」
「お前らももっと楽しめよォ! このハードでファンタスティックなこのダンスをよ~!」
「狂ってやがる……!」

クロスはビルの壁を足場にして高く飛び上がり、空中から槍をブーメランのように回転させて投げつけ、男の腕を切断しようと試みた。

「フハッ! いいねえいいねえ~! 気持ちよくなってきたぜえ~!!」
「!」

槍は男の腕を明らかに両断する軌道だったが、先ほどと同じく鮮血が噴き出すのみで、腕が落ちるどころか外傷らしきものすら全く残らなかった。

(これは一体……!?)
「難しい顏してちゃ楽しいもんもつまんねえぞオラオラァ~! もっと楽しめよォ!!」
「ッ……ぐあ!」
「ミラーッ!」

男の放つ弾丸は増加し続け、逃げ場を失ったミラは捕らえられ、弾丸の雨をその身に受けた。

「ッッッッブハアアアア~! 気ンンン持ちィィィィィ~~~!!」
「……!」
「次はテメーだァ……イヒーハァ!!」
「ぐっ!!」

男は素早くクロスに詰め寄って銃身で殴り掛かり、クロスに防御させる。
その銃口はクロスの額に向いていた。

「ッヒャア!」
「ッ!!」

銃弾が発射されるその瞬間、素早く後ろに身を倒しクロスは弾丸を躱す。
男は高笑いを響かせながら無数の弾丸を続けてクロスに撃ち込むが、クロスは素早く槍を回転させ、一撃ですべての弾丸を叩き落した。

「か~っこいいねえ~! シビれるぜえ!」
「……」
(反撃しようにも、俺の斬撃もミラの打撃も全く効いている様子がない……! どう対抗すればいい!?)
「どしたい? 難しい顔して考えてんなよ、もっと激しく楽しくヤっていこうぜ~、その方が絶対気持ちいいんだからよォ!」 

男が二丁拳銃を構えたその瞬間、白銀に輝く無数の光が男に降り注いだ。

「!」
「うおっ……!」

男は素早くビルの屋上に飛び退き、あたりを見回す。
そしてその光の正体を見つけたその時、男の顔から初めて笑みが消えた。

「……見つけたぞ、エスタジ」
「……」

クロスはその隙に倒れているミラの元へ向かう。
傷は浅いようだが、衝撃で気を失っているようだった。

「ミラ、しっかりしろ……!」
「う……クロス……アイツは……?」
「……何が何だか俺にも分からん。 しかし、いったんルーノと合流した方がいいだろう。 ここは退くぞ」
「……ああ」

一方、男をエスタジと呼んだ銀髪の青年は、そのエスタジのいるビルへ飛び移り、正面へ立った。
その青年は、ガラテアにアルジェントと呼ばれた男だった。

「……どしたい、ガラテアの子犬ちゃんよ。 俺が気に食わねえってんで殺しにでも来たかい」
「違う、逆だ。 エスタジ、貴様を連れ戻しに来た」
「……ほおお?」

エスタジは両手に持っていた二丁拳銃をホルスターにしまう。

「俺が戻ると思ってんのかよ? テメーらのそういうおめでたいところだけは笑わせてくれるから好きだがな、テメーらのつまらねえ計画に乗るのなんざまっぴらごめんだぜ。 ちっともCoolじゃねえ~んだよ」

エスタジは嘲笑うかのように自身の頭を人差し指でトントンと叩く。
頭がおかしいとでも言いたげなようだった。
が、アルジェントは表情を変えることなく淡々と続ける。

「我々も貴様がまともに手を貸すとは思っていない。 一時的にでも貴様の力が利用できればそれで済む話」
「アア!? トチ狂って楽しいダンスでもしに来たってのかァ!?」

エスタジは怒りと狂気の笑みが混ざった凶悪な顏つきでホルスターから抜いた拳銃をアルジェントに突きつける。
が、アルジェントの次のセリフを聞いたその瞬間、その表情は消え去る。

「我々の次の目標、それを貴様にくれてやる……ファーストをな」
「!」

エスタジは拳銃を突きつけたまま、静かに笑い始めた。

「クフフフフ……なるほど、テメーら知ってるってわけかい……アレの居場所を」
「ずっと探していたはずだ。 お前ほどの戦闘狂ならばな」
「ククククククク、クヒヒヒヒヒ……ああ~、探してたともよお~……だから」

その瞬間、エスタジの赤い瞳が見開かれ、表情は狂気一色に染まった。

「テメエから今聞くぜエ!!!」
「!」

刹那、トリガーが引かれ、赤い閃光が一直線に地平線まで走る。

「……愚か者が」

アルジェントは反対側のビルに降り立つ。
その額からは赤い血が一筋流れており、弾丸を完全にかわすことは出来ていないようだった。

「テメーらみてえなジメジメしたナメクジ集団に聞くなんざ最高にCoolじゃねえ~!! そんな真似するくらいなら死んだ方がマシなんだよ!! ご主人様に伝えとけよォ! テメーらナメクジは地面を這いずってんのがお似合いなんだァ、一生そこで引きこもってた方が身のためだぜってなァ~!! ヒーヒャハハハハアアアアアハハハハハハハアアアアアアア~~~!!!」

旧市街地の空に狂った声をこだまさせ、エスタジは灰色の空へと飛び去って行った。
アルジェントはエスタジの飛び去った方角をしばらく見た後、背を向け同じように反対の方角へ飛び去った。







クロス「……とうとうガラテアが動き出したと見ていいだろうな」
ルーノ「本当にガラテアの造ったクローンだったのか?」
ミラ「直接名乗っていたわけではない。 だが、間違いないと思う」
ルーノ「……そうか」
白刃「……あの」
ブラッド「俺達はこのチームに入ってから日が浅いからよくわからねえんだけど……ガラテアってのはルーノ君を造った人?」
クロス「そうだ。 ガラテア・メルフォーゼ……この世界じゃ生物学の権威とまで呼ばれる男だ」
白刃「そんな人とどうして対立しているんですか?」
レイ「アイツはルーノと同じような人造人間を何体も造り上げて、度々人間を襲撃してるんだよ」
レイ「最近は特に動きが激しいから、お前らも見たことあんだろ? ロボットみてえな無表情なツラした人間が暴れまわってるの」
白刃「はい、クローンの鎮圧とかいう作戦名でよく発布されてるアレですよね」
レイ「アレの元凶がガラテアってわけさ」
白刃「なるほど……でも、そんなことをしてガラテアは一体何が目的なんですかね?」
クロス「明確な目的はまだわかってない。 今のところヤツがしているのは、大量のクローンを市街地に放って人を襲わせていることだけだ」
クロス「だがいずれにせよ、こんな危険な生物兵器を生み出す男を野放しにしておくわけにはいかない」
レイ「ルーノみたいに自我を持つクローンは結構少ないみたいで、街を襲ってくるヤツらはほとんどロボットみてえなのばっかりだからな……」
ブラッド「……」
ミラ「……それに何より、ヤツは過去に複数の星を渡り歩き、クローンを使って襲撃したこともある。 私の出身星である惑星アニマも被害に遭った」
白刃「もしかして、ミラさんとルーノさんが最初対立してたっていうのは……」
ミラ「……そうだ。 ガラテアはルーノを使ってアニマを襲撃したんだ」
ルーノ「……」
ミラ「今はたまたま小規模の被害で済んでいるが、またいつヤツが同じことをしでかすかわからない。 それ以上に、私は両親と同胞の仇としてヤツを必ず倒す」
ブラッド「……なるほどねえ」
クロス「これからは気の抜けない日々が続くだろうが……皆気を付けろよ」
白刃「はい」
ミラ「一人では行動しない方がよさそうだな」
ルーノ「そうだな。 最低でも二人組で動こう」
ブラッド「……」
ブラッド(……クローン、ね)

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